CHORD QUTEST ~Impression~

 

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高域情報量については、明らかに実売20万円のクラスを超えた再現力を有しています。しかしこれは元のCDデータを引き出す「再現」ではなくて、WTAフィルターのアルゴリズムによる「再創造」という文脈で捉えた方が適切でしょう。煌めきのある華やかな高域ですが、ギラギラとした痛い音は出さないので扱いやすく、音源のジャンル適正も幅広くこなせます。クラシックももちろん良いのですが意外とアニソンを楽しく聴けたりします。CHORDの音は、シャープでもあり、同時に柔らかさも持っているという不思議な音世界があります。

基本的な考え方としては超オーバーサンプリング型でNOSとは真逆ですが、オーバーサンプリング系にありがちな音像の線の細さ、音の密度感の薄さといったネガティブな要素がQUTESTにはありません。ひとつひとつの描く線は非常に細いけれど、その本数が圧倒的に多いのです。それによって濃さを表現するという、今までの自宅環境では経験したことのない現象が起きています。

従来のオーディオ機器において濃く厚みのある音というと、今度は油絵的な音像の輪郭線の滲み、定位のハッキリしない再現になるのが典型ですが、CHORDの音は水彩で描かれた質感で、脂っこくなくて爽やかな空気感がそこにあります。

この水彩的な表現は、濁りが皆無で隅々まで非常に見通しの晴れた景色が広がっています。中域の濃さを求めるとありがちな傾向としては、少しくすんだ翳りのある表現、スモーキーな質感となり空間の見通しは悪くなります。QUTESTは非常にクリアな中域が確保された上で・・・ここが最も重要なことですが・・・音楽性の高さが両立されているのです。水彩のパレットの、色の幅が広いのです。非常にカラフルで華のある表現で、これがCHORDの最大の特徴だと感じています。

 

空間表現については、奥行き方向の深さが印象的です。音がたくさん重なる場面でも音像が大きくならずに各音を分離する性能は非常に優秀です。左右方向にもう少し広ければ、文句のつけようがないのですが・・・。狭いというわけではないけれど、奥行き方向の描写力が非常に高い水準にあるので相対的に左右の広がり具合が気になってしまうのです。ダイナミクスの幅が広いので箱庭的な表現にはならないところが救いです。 

 

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低域については、外部電源から供給する形にしないと若干量感が不足する印象です。オーディオデザインのリニア式電源 DCA-5Vを導入することで、かなり改善します。

ハイエンドモデルのDAVEを試聴した際にも、低域の量感はあまり求めていない印象なので、これは基本的なCHORDの傾向であると判断しました。

低域において特筆するべき点は音の立ち上がりの速さです。重く引きずるようなドロドロした感じ、またはゴムが弾むような弾力のある音というのは、たいていタイミングが僅かに遅れています。QUTESTの低域は非常にレスポンスが良好で、軽々と出てくる感じです。

オーディオデザインのリニア式電源から供給するとスピード感が僅かに下がるのではないかという懸念がありましたが、聴感上で全く違いがわからないほどに優秀でした。

4万円という価格は他社DC電源製品の2倍程度の価格の開きがありますが、それなりの理由はあるように感じます。

 

今回の記事では淡々とインプレを書くことに終始しました。

もう少し寝かせてから、CHORD社のRob watts氏に焦点を当てて何か書きたいと考えています。いつになるかはわかりませんが。