DCHP-200 , FOCAL UTOPIA , FOSTEX TH1000・1100RP

オーディオデザインDCHP-200 / FOCAL UTOPIA

FiiO R9のXLR出力から。フジヤのUTOPIA SGが故障により試聴機がないので、中古の初代を久しぶりに試聴しました。XLR4ケーブルだけ家から持参してます。

10数年前のDCHP-100はRCA入力のシングルエンド出力でしたが、流石に新型200ではバランス構成に。謎の円柱が消えてデザインは(センスがあるとは言えませんが)だいぶスッキリしました。凝った作りのアッテネータは200では採用されず、27型ボリュームになっています。

音の感想としてはまず初代UTOPIAから始めますが、やはりポテンシャルの高さは感じられるものの高域が暴れやすく非常に制御が難しい。それでも破綻せずに完璧に鳴らせたら実はこれSGより凄いのではないか?と思わせるだけの期待感があるんですよね。特に低域の深みに関してはSGは少しマイルドに馴らされた感があります。

DCHP-200については初代UTOPIAの癖が気になってしまい、アンプ側の評価までは少々自信がないのですが、概ね100からの正常進化系ということで問題ないと思います。バランス化したことで駆動力が向上した影響からか、100の時代に感じた緩さや定位の曖昧さが解消されてます。高域の質感についてはUTOPIA SGを持参して試聴しないと断言はできませんが、おそらく変な感じはしないはず。
現実的な価格帯の候補が増えることは非常に好ましいですし、LUXMANのような色付け系に対するニュートラルなオーディオデザインということで、試聴して自分の好みな方を探って決断すれば良いと思います。

 

FOSTEX TH1000RP

環境は固定のままヘッドホンだけ入れ替えてTH1000RPです。

FOSTEXの密閉型というとTH900が代表的ですが、あのような全体的に派手で低域の圧が強いサウンドではなく、平面駆動型のTH1000RPは非常に大人しい鳴り方をしています。TH900のように低域の被りや中域の篭りはないですが、かなり腰高で中央の密度も薄い。ドライな高域を楽しみたい方には向いているでしょうが、個人的にはトータルの完成度として30万円の価格は少々疑問です。音の定位に違和感があって、帯域によって前方から聴こえてくる音と変に後ろに回り込んで鳴っている音があります。

 

FOSTEX TH1100RP

密閉型はハウジング内部での反響が加わるので、やはり開発において難しい面があるのでしょう。開放型のTH1100RPは、相変わらず腰高で中域も薄いのですが音楽を聴く上で致命的とまでは言えないバランスとなっています。高域の質感もある程度良くなって繊細感が出てきました。

それでも手放しで褒めるには色々と不足している点も多いかなと感じます。大人しいサウンドで高域の繊細さを基調にするにしても、もう少し低中域にも目を向けてほしかったかなという印象です。聴き応えがあっさりしすぎて、サラサラと流れ去ってしまう感覚。

Niimbus US 5 Pro 試聴メモ

eイヤにてUTOPIA SGと付属XLR4ケーブル、オーディオみじんこNOCTURNE 6.3mmを持参して割と本気モードの試聴。FiiO R9のXLR OutからNiimbusへ。

 

「音の纏め方」は秀逸ですが少々鮮度が落ちていて、高域の角が丸められています。

楽器や音源の本来の質感を引き出すというよりは、最初から特定のトーン=Niimbusの志向するサウンドが常に乗っていて、その枠から出て行けない雰囲気を感じます。温度感は「温い」独特なもの。こういう感触は他で体験したことがないですね。

ポン置きでも最初から良い音が出て苦労はしない気がします。研ぎ澄まされたSNの良さはないけれど音の隙間を上手く埋めてくるタイプで、雑味や荒れた質感を感じにくい方向性です。ただし環境を奢ればどこまでも追従してくれそうな期待感はないです。常に薄膜1枚隔てた向こう側から鳴っているイメージ。それを考えると今のプライスからもう一段階の値上げが内々で知られていて、その価格はもう少し頑張ればMSB Premierが見えてしまうことを考えると。。。😅

駆動力はXLR4で十分です。6.3mmは物足りなさを感じます。
(NOCTURNE効果で音色はこちらの方が好みでしたが、本稿の趣旨から外れるので割愛)

PASS HPA-1との比較

  • 低域はPASSの方が深みと表現力がある
    Niimbusは一本調子で熱量を感じない
  • 情報量は高域を丸める要素を差し引いてもNiimbus優勢
  • 鮮度は少々落ちるが高域の荒れは抑えられているNiimbus
    高域のキラキラ感が時折気になるのがPASS(もちろん寒色系ではない)
  • 音源なりの自在性やアーティストの生命感をダイレクトに届けてくれるのがPASS
    Niimbusはあくまで機器側でコントロールされた音の箱庭の中に留まる

総合的にはやはりPASSで継続ですね。
Niimbusはどんな音源も常に一定のスコアを出した状態で鳴らしてくれるイメージを抱きましたが、PASSは特定の音源やシーンで振り切れた最大瞬間風速が出る、そんな対比です。
安定はしないんですけどロマンがありますよ。(音の雰囲気もそういうところがあります)

試聴インプレにも便利なFiiO R9

最近の試聴では普段使いとは別の小容量SDカード(読み込み時間短縮のため)を持参し、FiiO R9のLine Outを利用することも多いです。

前回のCURRENT MP421-M4の記事でもR9側のDACを通してます。少なくともRME ADI-2よりは判断に迷いが出ません。アレは低域が軽すぎるので。

yuki3.hatenablog.jp

ESS的な若干冷たく無機質な感触や、中高域のエッジを立ててくる要素は私の好みと反しますが、基礎性能に関しては不満のない出来です。

R9の利点は、これさえあればPCが不要であり、持参のSDをスキャンすればすぐに普段聴いている楽曲で試聴を開始できます。店側で用意されたPCを利用する場合って、普段使い慣れてないソフトの操作を強いられたり、そのPCに入っている音源が自分の普段聴かない楽曲ばかりで試聴の判断が難しくなるんですよね。

ならばDAPをトラポにすれば良いという意見はあると思います。しかしDAPをUSB-DACに接続しようとすると、意外と相性問題に遭遇するケースが多く、一見接続に成功したように見えてもいざ再生すると音が出ない(データの送信に失敗している)事例が私のCayin N8では頻発しました。

FiiO R9の場合は受け渡しするDACにUSBを接続した状態で起動すると「FiiO MUSICに○○(DAC)への接続を許可しますか?」というダイアログが出て、OKを押すことで認識されます。このワンクッションが重要のようで、これまでの試聴機会でDACへのデータ送信に失敗したことは一度もありません。この安定性は非常に大切だと思います。

 

家でも偶にはR9でPhone Outの音を聴いて、「水準」をもうひとつ自分の中で作っておきましょう。水準というのは、「1台で完結する構成でこの音が出てるなら、何か試聴しに行った時にこれくらいの音は出ていてほしいよね」みたいな感覚を、好みはとりあえず排除して自分の中で設定しておくという意味合いです。

また、DACやアンプの試聴ではなくヘッドホン単体を簡易的に試聴する場合も、色々な機器を通るよりも簡便なシステムの方が(まともな音が出てるなら)判断しやすいです。

 

さてR9のPOの音質ですが「思ったより悪くはないな」という感触です。XLR4では自分の好む音からはズレてますが、UTOPIA SGらしい中低域の深みもちゃんと出ています。これなら十分及第点だし、おそらく多くの人が納得する音が出ているように思います。トラポ・DAC・HPA機能が全て入って26万円でこの音が出るなら優秀でしょう。

ちなみに普段私が聴いている音のエッセンスはR9のPOにNOCTURNE挿してようやく2割って感じでした😓

やはりCHORDとPASSがないと私は生きていけないようです🤣

 

CURRENT MP421-M4

eイヤに大変珍しい中古が入荷してました。

家からUTOPIA SGとNOCTURNEを持参しました

出力はシングルエンドですが入力はXLR専用となっています。スタックされた下段は専用PSUです。

アッテネーターは上の「16」が一番大きいので注意してください。本来は「-16」と表記すべきで、そこからノブを回して-15、-14~で振り切りのMAX(0)が最大です。また、「48」でMINの位置でも完全に無音にはなりません。64dbステップのスタートが無音量ではないからです。MUTE=(dim)スイッチ、最大固定が右側のCUTです。初見だと全体的に少し分かりにくい印象がありました。

UTOPIA SGでは「32」側の最大付近~「16」の最小付近で聴きました。能率が90db以下のヘッドホンでは録音レベルの低いクラシックは不足するかもしれません。

 

環境は持参したSDカードをFiiO R9に入れて内部DACのXLR出力→MP421-M4です。

CURRENTの音を聴いた瞬間、私は10年前に使っていたオーディオデザイン「DCHP-100」を思い出しました。全く同じとまでは言いませんが。偶然か、アッテネーターの仕組みも考え方としては同じですね。

  • クッキリして分離が良い
  • なのに少しだけ緩くて肉付きのふくよかさがある
  • SNが非常に高い
  • 「妥当な」空間の広さ(演出的に広げた作為がない)
  • 音のピントがきちんと合う

これらの特徴はDCHP-100と似通っており、モニター的ではあるんですが神経質な面がなく安定して聴ける音になっています。僅かな緩さというのは、ダンピングファクターが低いタイプのドロドロした制動の悪い低域ではなくて、音像を過度に締め上げる窮屈さがないという意味です。

細身ではなく安定感があり、ファットな方向には行かず、マッシブで暑苦しい方向でもなく・・・良いバランス感覚に整えられてると思います。強いて言えば温度感が若干冷たい印象はありました。

そしてやはり良質なアッテネーターは情報量のロスや音瘦せがなくて素晴らしいですね。聴きながら回すと、その回し方によっては音が瞬停したりブチブチノイズが入るのは機構上仕方がないことなので諦めましょう😅

Formula Sが型番そのままでマイナーチェンジ(?)していた件

2023年11月より、XI Audioは「Eleven Audio」に表記が変更されました。このFormula S展示機のトップパネルにも「Eleven」が追加されていますね。ちょっと久しぶりに聴いてみましょう。

おや?ボリュームノブも違いませんかね?以前のはツルツルした質感でしたが、この個体はローレット加工が施されています。話は逸れますが私はマニュアルフォーカスのカメラレンズを趣味で扱うので、フォーカスリングの手触りとトルク感については拘りがあります。

getnavi.jp

その感覚をオーディオ機器のボリューム機構についても引き継いでます。このFomula S展示機は適度なトルク感で手触りも良好で個人的には良い感じです。

 

さて、確証はありませんが、これもしかしたらVolume以外にも内部構成に変更があるかもしれません。音が以前と大分変わりましたね。

以前は中域に厚みがあってマットな質感で空間の天井方向が低い印象でした。駆動力は確かにありますが若干もやっとしたSNの低さが気になる感じです。

現在のFormula Sは、より現代的なサウンド傾向にリファインされた印象です。上方向が比較的しっかり抜けるようになり、中域の厚みは少しスリムに。靄もある程度晴れてクリアになっています。(価格水準からすると、まだそれでも若干弱いか)

私がこの日試聴したFormula Sのチューニングで気になるのは、現代的な方向性に寄せたことで比較的寒色系にシフトし、以前にはなかった質感の粗さだったり声のガラっとした渇きが感じられること。個人的には音楽的な纏め方については「XI Audio」時代の方が好きでした。中域の厚みがあって暖色系で、細かい情報量は出せず大雑把な性格ですが、マットな質感であることが肌理の粗さを目立たせないわけです。

 

私の評価の癖や趣向として「嫌な音を出さない」機材を重用する傾向があります。特に声の渇きだったりガラガラした質感が少しでも見えてしまうと、普通の人より下げてしまう度合いが大きい自覚があります。ヘッドホンで例を挙げるなら私はAUDEZE LCD-5の音がかなり苦手です。相当に辛口で厳しい音に感じてしまいます。

こうした要素があまり気にならないという御方は、私の書いた文面をある程度差し引いて解釈した方が齟齬がないと思われます。

Boulder 812 DAC → Riviera AIC10-Bal → HiFiMAN SUSVARA

前々回の記事ではBoulder 812にフォーカスして文章化しましたが、同日に今度はBoulderにDACを担当させてRiviera AIC10-Balを試聴しました。

yuki3.hatenablog.jp

RivieraのHPA部はHiFiMAN SUSVARAを満足にドライブ出来る、という評価を見ましたので、その実力を私も体験してみます。

 

Boulderのライン出力が最大では大きすぎると感じたので、FIXではなくVariableで少し下げてから通しました。RivieraのHighゲインでSUSVARAを接続してボリューム位置が10時くらいになるようにBoulder側を調整しましたが、これで適切なのかは正直分かりません。

 

確かにSUSVARAをしっかり駆動出来るだけのパワーはあると感じます。しかし、それと同時にSUSVARA自体の限界点も見えてしまい、結局UTOPIA SGをBoulder直結で聴く方が情報量を削られていないし「軽々と歌う」様子が手に取るように分かるんですよね。これは「低能率なヘッドホンに高電圧を掛けてドライブする」場合にありがちな現象だと思ってます。

直前に聴いた方の音に意識が引きずられて、やや辛目な評価になってしまっているかもしれません。試聴インプレは何年この趣味やってても難しいなって思います。

もちろんBoulder直結のSUSVARAではそもそもパワーが足りない気がしますし、このような「血色の良い」音にはならないでしょう。Rivieraは音楽的なエモーショナルを伝える力が豊富です。生楽器の質感も良いだけに、BoulderとUTOPIA SGのシンプルな構成では見えていた領域が削られてしまっているのが惜しいと感じます。

つまるところクラシックとの相性は毛色として合ってるんですが、それならもっと見えていて欲しいところがマスクされている。そこがもどかしい。価格もMSB Dynamic HPA以上と非常に高額ですから、そこはやはり色々と要求レベルは上がってしまいます。

RivieraとUTOPIA SGの組み合わせは結局試さなかったので何とも言えませんが、今度はパワーがありすぎて難しそうなイメージがあります。

FiiO R9の地震対策 , Kanto Audio H2 ヘッドホンスタンド

今日は小ネタ2つで軽めの内容。

FiiO R9の地震対策

FiiO R9はこれまで傾斜付きスペーサーを使用して設置していました。

見下ろす角度が自然に正面を向くので操作性は良いですが、滑りやすい素材なので強い振動や地震が発生した際に転倒しないか不安を抱えながらの運用となっていました。

もし床まで落下してしまった場合、高い位置からの強い衝撃が加わります。まず無事では済まないでしょう。

そこで3年前の記事を思い出し、しばらく使っていなかったAITEC Λ8.24 ProとUpgradeキットを組み合わせてFiiO R9に応用してみました。

yuki3.hatenablog.jp

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R9の底面にリングを貼り付けてインシュレーターと一体化させます。デスク側にもリングを付けてしまうと今後の位置調整が出来ないし、両端を固定すると過去の経験では「効果が強すぎる音」になってしまいます。デスクに直接置くと、ちょっとした操作でズレてしまうし、第一の目的である転倒防止の役目を果たしません。

少し考えた結果、R9のモニターを拭いたりする用途の余ったクリーニングクロスを敷くことに。これは少し手で揺らしても全くグラグラしませんが、クロスをゆっくり引くことで位置の微調整が出来ます。

災害級の大地震ではどうなるか分かりませんが、少なくとも傾斜スペーサーで設置していた時よりは安心感があります。

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このインシュレーターはトラポで絶大な効果があります。3年前の印象と基本的には変化していないので詳細は記事リンクにて。今の環境と感覚では若干温度感が下がる感じはします。

MINI ITXケースのPCに環境が変わってからは出番がありませんでしたが、FiiO R9で復活させることができました。

 

P.S. 2024-08-17

このセッティングは中止しました。どうも音に違和感があって、3日続けてみましたが慣れません。こういう時は自分の感覚を信じるに限ります。

元の傾斜付きスペーサーに戻しました。

Kanto Audio H2 ヘッドホンスタンド

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聴いている時間帯のちょっとした休憩を挟む際に、あまりデスクに直接置きたくないなと思ってヘッドホンスタンドを買いました。

十分な背丈があるのでヘッドバンドを引き出した状態で掛けてもプラグに負荷が加わらず、土台に安定感があります。トップはシリコン素材で弾力性があるけれど長時間掛けていると張り付いてしまうので、クリーニングクロスを敷いてます。

UTOPIA SGにはキャリングケースが付属してますが、これはヘッドホン祭とかのイベント時に活用するとして、普段のカジュアルな使い方ならこれに掛けておけば十分です。