Unique Melody Umbral 試聴記

前回の20万HIT記念記事では今後のオーディオはしばらく様子を見るようなことを書いていたような気もしますが、まぁ実際に当初は多少ナーバスになっていたりしましたが、そんな四六時中おたおた不安がっても仕方がないということで、しれっと通常運営に戻っています。

というわけで先月はUnique Melody Umbralを試聴しに行きました。

我が家のPASSでは駆動力が明らかに不足するでしょう。

Boulderでは低域が出ないこともそうですが、全体的に上擦った感じで高域も掠れたり刺さり気味だったので、「これはちょっと・・・」と正直思いました。
RivieraはSusvaraを満足にドライブできる代表的なアンプとして挙がりますが、私としてはSusvara自体の能力限界が見えてしまう感じがあって、このヘッドホンにそこまで投入する意味とは?とか考えるのですけど、Umbralで見えた世界はこの2~3段先に到達している感触がありました。

Umbralの音はある意味でSTAXを思わせる微粒子が舞うような、サラサラ感があります。むしろ現実に我々が日常で耳に入る音はこんなにサラサラしてないぞ、とツッコミを入れたくなるくらいです。Rivieraと組み合わせた時は、STAXでは明らかに出ない低音の深さと、広い空間に膨大な情報量を配置していく様子は圧巻。
しかしSusvara以上に能率が低く、市場の生半可なヘッドホンアンプではまともに音量が稼げず、Boulderですら「音量は間に合うが低音は抜けてしまう」

高域に関してはUmbralそしてSusvaraどちらも方向性の異なる癖があって、私の感覚ではSusvaraの方が苦手な出方です。メタリックな鈍い響きが乗り、砂をまぶしたような細かいモザイク模様があって情報量がマスクされる感覚。これに対してUmbralの高域は「ハスキー」な音で、刺さり方そのものは「鈍く痛い」ものではない。背景が白い。

𝕏投稿用のサムネイルとして

20万HIT記念エッセイ 『平穏を噛み締めて、今を生きる』

アクセスカウンターを表に出していないので普段は見えませんが、実はトータルアクセス20万HITに到達していました。

ページ下部にあるTOP5を定期的に観察すると、その時々によってトレンドは多少変化しますが、安定的なアクセス元というのはある程度確保できているようです。世の中には「アクセスを稼げる文法」というのが存在するようですが、私はこれを全く無視して好き勝手に書き連ねているだけ。このような個人のブログは検索から締め出される傾向にある現代のwebで、安定的なアクセスを維持できているのは幸運です。オーディオ趣味のニッチ性にも助けられている側面はあると思います。つまり、ある機材のレビューを書き上げる際にライバルとなる人数が非常に少ないということ。あくまで私の基本的な運営方針は、読者の需要であるとか、アクセス数を稼げる見込みのある記事を積み上げることではないのだけれど、副次的にそうした特にニッチな需要を満たせるのであれば、それは素直に嬉しく思います。

 

さて、米国大統領の暴走によって(イスラエル側が焚きつけてそれに乗っかった、とも読めますが)世界情勢が非常に緊迫しています。一時は短期的なエネルギー供給崩壊も起こりうるのではと不安に駆られましたが、こまめに情報を追っていると現時点(3/22夕方)では流石にそれは回避されつつあるのかなと思います。ただ、頭の片隅から完全に消し去ることはできません。「最悪のシナリオ」が回避されたとしても、今後の経済への影響は甚大であり、更なる物価高騰は避けられないことでしょう。

このような状況下において、私自身もはや趣味に大きなお金を投入する気力は、すぐには湧き上がってきません。オーディオも、そしてこの数年で注力してきたカメラも、今ある機材で日常を楽しむ方向にシフトし、しばらくは様子を見ることになるでしょう。その間、とにかく故障がないことだけを祈るのみです。

しかし電気がなければオーディオは音が出ません。その「当たり前の日常」が瓦解する可能性が皆無ではないことが頭をよぎると、ますます日々のリスニングタイムを集中して聴き取ろうという気持ちになってくるのです。毎日のルーティンに組み込まれたこの時間は、決して永遠のものではない。ある日を境にして突然に切断されてしまうことも、全くあり得ないこととは言えないのだから。

 

最後に、メンタルのお話。オーディオの音を総合的に感じ取る上で精神と健康の安定はとても重要です。こういう情勢なのでネガティブな情報が洪水の如く押し寄せてきますが、それにメンタルをやられて日々の食事すら喉を通らない状態になっては元も子もありません。フォロワーさんではないですがTLを見てると「おすすめ」タブにはちらほら出てくるので。もちろん個人の可能な範囲で備えをするのは大事ですが、自分のメンタルのキャパを超える情報は思い切って遮断する。これもひとつの勇気でしょう。SNSからログアウトする、PCやスマホをシャットダウンする、テレビのニュース番組を見ない。これは「心の自衛」です。心が回復してきたら、少しずつ再開すればいい。

私自身は何だかんだ食事も睡眠も普段通り取れています。普段🥺とかやってる人が案外図太かったりするのでしょうか(

記念記事が何とも重い内容になってしまいました。

オーディオみじんこ DF-OFC×2 / 4N銀×2 4芯スターカッドケーブル

オーディオみじんこHPでDCケーブルとして常時掲載されているのはSOtM外部電源sPS-500用の
「POINT5-DC-SOtM」で、私はこれをHDPLEX用に2番HOTのXLRでカスタマイズ注文して使っていました。

audiomijinko.thebase.in

1本はFiiO R9用に、そしてもう1本はCHORD QUTEST用にMicro USB仕様でオーダーしていますが、現在はDAC更新にて退役となりました。

 

さて、正式なHPのラインナップには掲載されていませんが、今回の記事タイトルのような、ディップフォーミングOFCと銀のハイブリッドDCケーブルの製作依頼が度々入るようです。オンラインで「特注 ○○様専用」で立てられているのをよく見かけます。

価格は1芯のPoint5より上がりますが、BriseのHypsos用YATONOよりは全然安いし、ちょうど良い感じのところを突いていると思います。というわけで私もオーダーしました。

DCケーブルって軽視されがちなセクションだけれども、実は非常に支配力が大きい。
HDPLEXの付属ケーブルでは中高域のエネルギー感が強く、硬めな質感で疲れる音になる。一方でPoint5は角が取れて穏やかな表現で気に入ってはいましたが、全ての帯域を8割くらいのエネルギーに抑えることでコントロールしている気配があり、このロス感が気になっていたわけです。

DF-OFC×2 / 4N銀×2 4芯スターカッドケーブルでは、全体のスケールが大きくなった上でPoint5の丁寧な表現という要素を受け継ぎ、銀線がブレンドされることでシルキーさが加わるという印象です。やや背景が白くクリーミーな方向に寄るので、そこは好みで判断する要素になると思います。NOCTURNEヘッドホンケーブルとは少し毛色が異なるという意味です。
銀線の音が好きだから4芯全て銀で注文された方もXのFFさんで見かけましたし、逆に銀の要素を入れたくないならオールDF-OFCでPoint5の強化版イメージでオーダーするのもアリかもしれませんが、こちらは見かけたことはありませんね。

最後に、Point5はシースが柔らかく取り回しは楽ですが、この4芯スターカッドはDCケーブルとしては反発が強め。写真で見ても曲げ半径の大きさで伝わると思います。
オヤイデDCプラグの出来がしっかりしているので接続が緩い感覚はありません。

2025年、回想

時系列まとめ
  • 2月:壁コンセントをフルテック3点セットに交換

  • 4月:CHORD QUTEST故障
  • 7月:north star design Supremo 導入

  • 8月:NVS Copper 3S PC電源ケーブル 購入
  • 10月:以下2点を購入
    ① WAGNUS. Aqualice Sheep for FOCAL UTOPIA
    ② CHORD COMPANY Signature Tuned Aray RCA IC

  • 11月:SteinMusic Super Naturals Signature インシュレーター 購入

  • 12月:Bassocontinuo ULTRA FEET Level2 インシュレーター 購入

カメラの部

機材構成は去年から変更なし

Nikon Z5 → Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

次はZEISSのレンズにするかも?

今年の出費のほとんどはオーディオ関係でしたが、撮影から離れていたわけではありません。むしろ、着実な成長とクオリティの安定が感じられた1年でした。

個人的な事とか、思想の変化について

私もそろそろ若くはない年頃になってきたので、秋頃から体のメンテナンスに気を配るようになりました。具体的には歯医者の通院ですね。
検診と初回クリーニングを体験してみると、虫歯自体は親知らずと干渉している奥歯1本だけで、全体的な歯肉の状態も良好とのこと。ずっと通ってなかったので歯石は流石に多かったのだけど、結果的に奇麗にはなったので良かった。
次に歯ブラシのやりすぎ?で抉れていた根本をCRで埋めて、親知らず抜歯の為に口腔外科のある大病院に移動。先日右下を抜きまして、処置後1週間で糸を抜いたのが現在地点です。来月は左下をやります。

「思想の変化」とまで言えるものでもないですが、今年の私は特に平場(SNS特にXから)一定の心理的距離を取ることを意識していました。これにはいくつか要因があります。

  1. 信頼のおける固定メンバーで定期的に会って現場で話す環境を構築できたこと
  2. Xで抽出された発言は、物事の偏った一側面を切り取ったものでしかない
  3. (2)に関連して、SNSでの発言は、その個人の全てではない

以前の私は、何かしらの批判なり議論を割と積極的に提起するタイプだったと思います。それが今年は「ただ観察するだけで、何も言わない」態度をキープすることが非常に多かった。その理由は凝縮すると上記の3点に帰結するわけです。
2.を「消費する」だけのことに全く意味はなく、その発言自体も、その個人の一部が表出しただけに過ぎない。首を突っ込んで「空気」に乗っかることは当人の品格を下げます。
そんなことよりも、ただ自分の音に向き合い、定期的に会合を開いて、双方の近況を報告して、あの機器を試聴してどうだった、このケーブルが良さそうだとか。そういう実りある平穏な環境を大事にしたい。

「機材が高額になったから、趣味をやめようかなぁ」

オーディオではなくカメラ界隈の方の発言ですが、オーディオ趣味においても、また他の多くの「消費的側面」のある趣味において、全く同じ構造で記事を立てることができます。

「趣味をやめる」とは、どの状態を指すのか

私は上記の投稿を読んだ瞬間に、色々なことが頭を駆け巡りました。

まず、「趣味をやめる」とは本人にとってどんな状態を指すのだろうか。

この方は100本以上のレンズを所有しているようなので、日常的な巡回であったり次々と購入していく行為を中止する=「趣味をやめる」ということなのかなと。私は一瞬、「写真を撮ること」自体もやめてしまうのではないかと思ったのですが、該当postの返信を読む限り、その線はなさそうでした。

この例をポータブルオーディオに置き換えてみる

カメラボディ=DAP

レンズ=イヤホン

と置換してみれば、このブログの読者的にもイメージしやすいのでは。

消費行動がストップすると、熱が冷めてしまう人たち

これはやはりどんな趣味でも一定数存在するんですよね。

特にコレクター気質でイヤホンを大量に所有している人ほど、そういうイメージが私の中であります。(偏見が強いという批判は受け入れます)

「界隈」から離れて、ひとり黙々と打ち込む時期も必要

2023年春から翌年の夏までカメラ趣味の方が主軸に移って、オーディオ方面で試聴に出かけたり何かしらの機器の購入はしなかった時期がありました。(皆無ではないけれど)

その1年と数カ月において、Xにも深入りせず、能動的に情報を収集することもなく。そして手持ちの機材で細かなセッティングの調整もしなくなっておりました。

けれども、日常的に音楽を聴くことから離れていたわけではありません。「毎日30分でもいいから聴く」というこれまでのルーティンは崩さずに実行していたのです。

今になって思うと、この「傍から見ると停滞していた」時期こそが、実は現在の大きな土台になっていることは確信を持って言えます。

飽きを乗り越えて、相対評価からも脱却した先に

次々と新しい製品を手元に迎えている時は、絶えず新しい刺激が外部から入ってくるので楽しいに決まっています。今まで使っていたアレと比較してみよう、この組み合わせはどうだろう、と考えを巡らせて、その最中にもまだ入手していない製品の情報を集める・・・私もそういう時期は頻繁にやってきますし、確かに面白いことは事実です。

しかし、その循環をし続けていくと意図せず「相対評価」の視点のみが強化されていき、単純に言えば「AとBの差分」で音の全てを捉えようとする、そういう傾向が加速していきます。

ここで、私の1年と数カ月に渡る「停滞期」を振り返ってみる。毎日同じ構成で、しかも私は気に入った曲を頻繁に繰り返し聴く傾向が強いから、必然とある時点で「飽き」がやってきます。ここで、ちょっとしたセッティングを変更して「刺激」を取り入れたくなるのだけど、それを堪えて(という表現も、何だか変である)毎日、ヘビーローテーションを回し続ける。

趣味の深化とは、そこから受け取れる領域を広げること

オーディオシステムを長期で同じ状況で固定化することで、視点は次第に機材の相対的評価から離れていき、「今聴いている楽曲」について、より多くの情報(これは、オーディオ的な「情報量」という意味だけではなく)を認知出来るようになっていきます。

これは私の経験から言いますが、比例直線的に緩い坂を登っていく感覚ではなく、数カ月とか半年くらいのスパンである日突然に胸くらいまである大きな壁をよじ登った、みたいな体験をします。そういえばこの楽曲のこの部分の表現ってすごくない?って気付くと、連鎖的にヘビロテしてる楽曲のあれもあそこも・・・という感じ。

こういう「ジャンプアップ」を何回か繰り返すと、全然見える景色というのは変わってくるはずです。

 

次回は「SNSとの付き合い方、その功罪」

(と言って、全く違うトピックを書き始めるのは「通常運営」である)

音の方向性の転換

north star design Supremoを7月に導入してから、この数カ月の間にケーブル構成が大幅に変化しています。

yuki3.hatenablog.jp

その詳細は次項で列記するとして、先に理由を書きます。CHORD QUTESTの音傾向に合わせたケーブル選定をしていたのですが、その大前提となっていたDACが故障したので、システム全体の音の整合性が取れていない。具体的には、7月時点の音はケーブル群のみが暖色系の色を中途半端に乗せようとして、それが上手く機能しないわけです。

2019年に「QUTESTの方向性と合わせる」ケーブル選びが固まったので、ここから5年ほど変化がない状況が続きました。正確にはQUTESTが故障する少し前の24年の冬に、Swisscablesへの興味をきっかけにして徐々に構成の変化が始まりますが、それについては過去記事を参照してください。

yuki3.hatenablog.jp

今回の記事の位置付けとしては、この続きとなります。

NVS Copper 3S/PC

このケーブルは正直ミーハー精神で買いました😦

NVSの代表は別ブランドを立ち上げましたが、スーパーハイエンドなケーブルだけを開発する方向に舵取りしたので、生産終了したNVSの残り少ない弾数を考えると今の時点で所有してみたいと思いまして。🙄

接続箇所はHDPLEX。音はコシが強いというか躍動感があって音像の芯が強く出る方向性です。どうしても家のシステムは、ふわっとして音が立たない傾向があったので、そのあたりを補う意味では良い選択でした。これ1本で結構全体をまとめる力があります。懸念点としては背景が黒基調でダークな音色が乗ること。これに寄りすぎると私の求める傾向から外れていくので、NVSの複数使いは難しい印象です。

WAGNUS. Aqualice Sheep

FOCAL UTOPIA SGのケーブルをオーディオみじんこNOCTURNEからWAGNUS. に変更。製品レビューについてはnoteに寄稿しました。

note.com

CHORD COMPANY Signature Tuned Aray

RCAインコネをKimber Select KS-1020からCHORDに変更。上記のNOCTURNEと、このKimberを外したことが自分の中では相当の大転換です。このケーブルはFFさんに誘われてSISに初来店した記念(?)に中古をPendingしてもらっていたのを店頭で引き取りました。

音はWAGNUS. Aqualice Sheepとの調和が上手く行っていて目論見通りという感じです。以前の構成がQUTEST・Kimber・NOCTURNEで方向性を揃えていたところを、今度はnorth star designのDACを起点として自分の新しい音を模索していった結果、WAGNUS.とCHORDを選びました。

6年前にアンダンテラルゴからSarumTを借りたことがあるのですが、これはやや音像型に振られて低音が強く出て直接音が目立つ印象でした。この「Signature Tuned Aray」は現行から1世代前で、Sarumシリーズの1ランク下に位置する製品なのですが、私にはどうやらこのあたりで必要十分のようです。程よく穏やかで肩の力が抜ける感じ。

ちなみにこれと合わせて電源タップ側でPowerARAYが復活しました。

G Ride WD3Sの復活(AnsuzのCable Lifterお試し購入)

過去記事では割とネガ要素を多めに書いてしまったG Rideですが、SISオフ会()でケーブルが手元に戻ってきて、帰宅後しばらくぶりに壁から挿してみたら、今の構成の音に上手いこと適合しました。Purist Audio Designはどうしても乾いてザラついた湿度感の低い音になるのだけど、G Rideは良い感じにしっとりさせてくれます。

こういう経験があると、ある時点で自分にとって不要だなと思った製品を、安易にtwitterの売買取引だったりヤフオクへ出品しない方が賢明であると考えるようになりました。オーディオは絶対値的な性能の上下関係も当然ながら存在しますが、実はそれ以上に組み合わせの妙が決め手になることの方が、現実的にはかなり多いこともまた事実でしょう。

さて話を本題に戻して、取り回しの都合でHDPLEXの筐体にケーブルが接触してしまうのですが、この地点でかなり音が変わることに気付いて、色々と試しています。最初は家に余っているインシュレーターを試すのはケーブルインシュあるあるですね。

Ansuzは現行がものすごく高いので例によって旧モデルの中古を探してきました。下から2番目のC(セラミック)です。これは導入してまだ数日しか経っていないのでレビューはしばらく様子を見たいと思います。

さて、Ansuzを調べているうちに今度はコンポーネントのフットの代わりとなるインシュレーターに興味が出てきました。というのも、PASSもNorth starもHDPLEXも全て純正の足でそのまま設置しているんですね。金属系で滑ってしまうのは困るのですが、かといってゴム系でもない、何か面白いのあるかなぁ🧐

 

おまけのラック裏配線模様

 

次回は、「変わるもの、変わらないもの」

最近の試聴記録(dCS Bartok APEX , FOSTEX TH910 , Meze Poet)

dCS Bartok APEX DAC

dCSの試聴経験は過去に2回ありますが、どちらもAPEX化される以前の状態となります。

初回は2022年6月で、当時の私が使っていたfinal D8000で試聴し、Bartok「+」として、つまりDAC複合機のヘッドホン出力の音で判断しました。
この時の印象は正直あまり良いものではなかったです。駆動力はあるけれど、アタック成分が過剰で、硬く刺激的で神経質な音でした。

2回目の試聴は2022年10月で、この時の主目的はFOCAL UTOPIA SGの試聴であり、たまたまDAC部分をBartokが担ったというものです。HPAはNiimbus US5 PROで、このアンプは音の角を丸めたり少し曇るところがあって、BartokDAC部分を判断するには少々難しかったです。

この後しばらくしてdCSはフジヤの展示から引き上げられてしまいました。翌年dCSはAPEXにアップグレードされましたが、結局その実機をずっと聞けずにいました。ところが今年の8月になって短期間ですがオーディオユニオン御茶ノ水Bartok APEXが入ってきて、最終日の11日に滑り込みで聴けました。

例によって価格のことは無視しますが、この音なら「ある程度は」納得です。APEX化される前に聴いた印象はfinal D8000との組み合わせの問題も含まれていたのかもしれません。Bartok APEXをUTOPIA SGで聴くと、そこまで過剰に硬く神経質という印象はなかったです。ただし音楽的な表情についてはやはり硬直的で一本調子なところは相変わらずでした。

dCSはヘッドホンユーザー向けに展開したLinaシリーズがあり、むしろこちらの方が質感の滑らかさがあり個人的には印象が良いですが、駆動力が不足しており左右空間が狭い。

FOSTEX TH910

8/31(日)吉祥寺パルコに移転したオーディオユニオンにて。

これは試聴してすぐ次の人にヘッドホンを渡したので写真無しです。

TH900mk2との比較をしました。環境はDenonのプレイヤーにCDを入れてラインアウトからTEAC UD-507。TH910の実機を観察すると、ハウジング中央のFOSTEXロゴが消えているだけでなく、フラットになっている部分が広くなりました。

この変更が音にも現れているのか、TH910では音場が少し前方定位する感覚があります。この後TH900mk2を聴くと、誇張した表現ですが音が後ろに行ってしまうのです。TH900はmk2になる以前から私は知っていますし、あの当時から高性能ではあるがピーキーで暴れやすく扱いが難しいヘッドホンという認識でした。

TH910ではこうしたネガが丹念に取り除かれており、なおかつ緩くもなっておらず、現代の高い要求に耐え得る製品になったのではないかなと思います。音像の芯の中身にある情報が拾い出せるようになった点が個人的に大きな進歩です。旧型はどうしても音像の外郭ばかり強調する印象があったので。

Meze Poet

中野に移動してフジヤへ。

これは相当に気に入りました。家のメインシステムの調整がほぼ完了したら、セカンドベストとしてPoetを購入しても良いのではないかと考えるくらいです。Mezeというブランドは基本的にあまり環境の微細な反映をしませんが、元々の音色に魅力があります。そしてこれは個人的な解釈として話を進めますが、Mezeの色というのはEmpyreanが本流にあり、Eliteは「優等生」ではあるけれどMezeとしての魅力は薄まったという認識をしています。

Poetの色は明らかにEmpyreanの側に位置しており、しかもEmpyreanで目立った「音像が立たない」感覚が払拭されて、ある意味「普通のヘッドホン」として他社のメーカーと同じ感覚で聴けるようになりました。それくらいEmpyreanの音場って独特なのです。ミストシャワーが上から降り注ぐみたいな鳴り方で、Eliteでも3割引きくらいで感じます。

Poetはハウジングがコンパクトなこともあって空間はそれほど広くはなく、vocalと小編成を聴くことに特化した印象がありますが、音像の構築がしっかりしたのでその守備範囲における充実感が備わりました。低音も意外と芯があります。

「ただそれだけに没頭する」が難しい

アンケートを取るわけではないのですが、あなたは自宅のオーディオシステムで聴いている時、「他に平行して何かの作業をしていますか?」

その行為自体を否定的に捉えているわけではもちろんありませんが、実はかなり多くの方が音楽を聴くと同時にSNS閲覧や投稿その他ネットブラウジングをされていると思います。

私自身も、ネットワークに接続されたPCをトランスポートとしていた頃は、そうした平行作業を当たり前にやっていました。楽曲の情報や演奏者について調べることもありますが、ヤフオクで何か目ぼしい出品がないか巡回したり、オーディオショップの新着情報をチェックしてしまうのはマニアの性というヤツですね。もちろん、聴きながら音楽にもオーディオにも関係のないページを閲覧していることだってあります。

 

ところが、2024年6月にFiiO R9を導入したことが転機となります。購入後の数カ月こそ写真のRAW現像作業をやりながら聴いていたのですが、やはりPCを起動しているだけで電源の汚染が酷い為に、オーディオシステムの稼働中はPCの電源を落とすことにしました。
同時に、WiFiルーターも部屋から撤去してしまいました。これによって、音楽を聴く時のネット環境といえばスマホのキャリア回線に限定されるわけですが、どうも近年の電波環境が貧弱になっているのか部屋の中まで十分に届かず、頻繁に途切れてしまいます。夜に雨戸を閉めると、さらに悪化して10分に1回、30秒くらいしか受信しません。これはあまりにも不便ではありますが、一方で私は意図的に自らをこのような環境に置いているのです。

オーディオは聴覚のみを占有して視覚はフリーとなる趣味ですから、ついつい手持ち無沙汰になってスマホを手に持ったり、PCのモニターを見たり、あるいは本を読んだりしがちです。ここで、ある意味での誘惑を断ち切って純粋に「ただ聴く」という行為に没頭してみると、「ながら聴き」よりも良い音に感じられ、認識できる領域もより広がっていることに気付かれると思います。少なくとも私はそうです。

ここで、わざわざWiFIルーターを部屋から撤去しなくても、スマホを手に届く範囲に置いていても、見なければいいだけではないか、という指摘はあるでしょう。しかしながら、これは選択肢の有無の問題であって、「音楽を聴きながらネット閲覧をできる状況にあるが、そうしない」に対して、「聴くだけのことしかできない」状況は、心理的に全く同一ではないことは明らかです。結果としての行動は「他に何も作業をせず、ただ聴くだけ」であったとしても、その時間における内心の集中度合いには差異が発生するはず。であれば、私は後者を選びます。中途半端にどちらもできるという状況に身を置き、なおかつそれ(聴くこと以外の平行作業)を自制するというのは心理的に何とも気持ちが悪い。

 

この先は私の環境とは離れたオーディオ趣味としての一般論となります。ネットワークオーディオ、そしてストリーミングサービスは確かに便利だし、音楽視聴スタイルとしてこの形式が主流派となっていくことは明白でしょう。DACにLAN端子が備わっていることも当たり前になり、旧来の「USB-DAC」という概念はもはや消失したのではないか?と思わざるを得ません。
ここで、Roonとストリーミングサービス(TIDAL等)を連携させたシステムを想定する時、音質を追求しようと考えた際に手を入れるべき箇所が膨大であることに気付きます。しかも、Roonの母艦となるPCにはハイスペックな処理性能が要求されます。難しいのはネットワークの伝送経路で、ルーターやハブ、光絶縁までやるとなればシステムの全景は非常に複雑となります。

「手をかけられる箇所が増える」ことは、ある意味では趣味として楽しいことであるとも言えますが、一方ではオーディオマニアの心理として「オーディオ機器然としたモノ以外を排除したい」と考えるのが、むしろ自然ではないかと私は思えるわけです。信号経路はなるべくシンプルに、そして選び抜いた機材へ資金を集中的に投入する。
そういった意味では、PCオーディオが一般的になる以前の、CDプレイヤーが主流だった頃の、しかもトランスポートとDACが一体型になっている機器なんて、今の時代から見れば究極のシンプル構成に見えてしまいます。

ネットワークオーディオが主流となって以降、聴きながらずっと検索なり調べ物をして、アルバムの中からお気に入りの楽曲だけを抽出して、ということをやりがちだと思います。私も長らくこういうスタイルが染みついてしまい、アルバム全曲を通しで聴くことは少ない。本当は良くないとは思っているのだけど、クラシック音楽の大曲は全ての楽章を通しで聴くと長いから、気に入っている楽章だけ聴いて、すぐに次へと移ってしまう。平日で30分くらいしか今日は聴ける時間がないという日は、この曲とこの曲の第一楽章だけ、なんて選び方をしがち。
ではCDプレイヤーだったらどのように聴くか想像してみると、比較的時間が取れる日は何枚かディスクの入れ替えや、少々のトラック飛ばしはするでしょうが、ネットワークオーディオ的な「スクランブル」な聴き方はしないと思われます。

 

「ただそれだけに没頭する」ことが難しい時代になっています。かなり強力な意志の力がなければ、スマホ依存から脱却することは不可能です。しかも、深刻なのは無目的に徘徊しているその時間のほとんどは、本音を言えば我々は退屈しているのではないでしょうか?私はスマホ眺めてる時間って脳の一部が働いてない感覚がものすごくあって、だんだん頭がボーっとしてきます。

これではいけないと悟ったある日、WiFIルーターを部屋から撤去し、雨戸を閉めて、スマホを鞄に仕舞って、何も手に持たずに目を閉じて音楽を聴いてみたら、非常に頭がスッキリする感覚が本当に久しぶりに戻ってきたのです。インターネットも携帯もなかった小学生の頃って、実はこんな感じだったのでは。
これは脳の良いデジタルデトックスになる・・・ことはないか。あまりにも時間が短すぎるので。それでも、脳の意識を切り替えられる時間を毎日少しでも作ることはそれなりの効果があるでしょう。

 

本稿は、(夏コミに落選した)合同誌執筆陣の会合において、喫茶店にて私が切り出した話題を同席されたお二方に展開・拡張して頂き、私の視点で再構成したものです。

ケーブル、その他アクセサリ類の変遷

まず、2025年7月9日時点のオーディオシステムダイアグラムを掲載します。

この後、7月下旬からケーブルの入れ替えであるとか、AudioReplasのタップ1口が空きになっているので、「挿しモノ」系のアイテムを試行錯誤していきました。その過程を記すのが今回の記事です。

全ての配置をスクランブルに試すのではなく、変更するセクションは以下の3つです。

  • R9からSupremoに接続するUSBケーブル
  • HDPLEXに接続する電源ケーブル
  • ActivTronを外して、別のアイテムに入れ替える
NORDOST TYR2 vs. Wireworld Platinum Starlight 8

まずはR9からSupremoに接続するUSBケーブルを選びます。

他の変更セクションの分もまとめて、システムから外している時に撮影した写真を先に掲載しておきます。

PAD TANTUS(プラグはOyaide M1,F1に換装)
NORDOST TYR2
ActivTron , nanotec 307 Basic

G Ride Audio White Devil 3s
CHORD PowerAray

USBが2つの写真で被ってしまいました。つまり、最初にNORDOSTで聴いた後に繋ぎ変えたWireworldの方で、ずっと固定しているということですね。それが答えということになります。

ブログには記事を立てていなかったのですが、CHORD QUTESTが故障する一カ月前くらい、4月の頭にWireworldのUSBを買いました。ここからDACが故障するまでの期間、かなり印象の良かったPlatinum Starlightですが、5月頭~6月中旬はFiiO R9からインコネを出していたのでUSBの出番はなく、Supremo DACの導入により復活という流れ。

NORDOST TYR2 は2020年に購入したもので、かれこれ5年目に突入。そろそろ違うUSBを試してみようと思ってWireworldに手を出してみたところ、すっかりメインはこちらに入れ替わってしまいました。

ということで両者の印象を。ポジ要素は、ネガはで分けます。

Wireworld Platinum Starlight 8

  • 音がスッと軽く出てくる
  • 微細領域の情報量が豊富
  • 発色は良いが、白くて眩しい。陰の表現は苦手

NORDOST TYR2

  • ビニールっぽい弾性や響きが乗る
  • 音像の線が太い
  • 発色自体は地味だが、華美な脚色なくバランスが良い

5年近くずっとNORDOSTのケーブルを使っていたのですっかり耳が慣れてしまっていたのですが、やはりシースの質感がそのまま音に乗っていることに気付かされます。また、最近の私が求める傾向として「音の反応の軽さと情報量」を重視するようになってきました。

G Ride Audio White Devil 3s vs. PAD TANTUS

HDPLEXに接続する電源ケーブルをこの2本から選ぶのですが、どちらも多くの問題を抱えています。性格的には非常に対照的です。

G Ride Audio White Devil 3s

  • 常に力んでいて音が重い
  • 低域は良く出るが、もこもこしている
  • 空間の上方向に抜けない
  • 細かい情報量が削られている
  • 温度感が高く有機
  • 濃い口で滑らか

PAD TANTUS

  • 音像が遠く、左右空間が狭い
  • 温度感が低く、ザラっとした質感
  • 基本性能そんな高くなさそうな感じなのに、意外と細かい情報量が出てる

私はレンジ感よりミクロの情報量を求めるのでPADの方を取りたいのですが、このケーブルの独特なトーンが近年特に合わなくなってきました。かといってG Rideに交換すると温度感は好みであるが、それ以外の要素は悉く私の要求とは真逆です。

G Rideは今月中に貸出で一旦手元を離れます。このセクションの電源ケーブルは3本目を調達する予定。

ActivTron vs. PowerAray

まずActivTronについて。これはエネルギーの総量が体感1.3倍くらいになるという、他にはあまりない特殊な効果があります。しかし接続する短尺電源ケーブルのキャラクターを非常に強く受けてしまう副作用があり、私は3本くらい試しましたがどれもシステム全体の出音と調和せず、最終的には匙を投げました。

手前から
① SAEC AC-7000 + JODELICA
② 音光堂販売のOyaide PC-23 + ME2591-4781
③ Nanotec 307 Basic + Furutech FI-15 ME-E

②は論外の音。①はぬるくてぼんやりする。③は中高域に濁りが出る。

 

CHORD PowerArayは、巷の評価ではSNが上がる方向のレビューが多いです。私も同意しますが、それよりもフォーカスが合う感覚の方を評価したいです。やや音場が凝縮された箱庭感を覚えることがあります。

north star design Supremo DAC

CHORD QUTESTの故障

前回記事の冒頭で、直近3カ月は夏コミで発表する予定だった(結果的には落選)合同誌の原稿作成にウェイトを割いておりブログを放置していたことを記しました。

原稿に着手しようとしていた4月末、つまりGW期間に入る直前に、私の音の要であるCHORD QUTESTが故障し、起動しない状態に陥ります。6年に渡って使い続けたこともあり、修理には出さずに次のDACを検討することに。

しかし原稿を書き上げながら新機材の選定を同時進行させるのは難しく、一旦はオーディオの新規開拓を休止し、合同誌の原稿に集中することにしました。これが4月末から6月の頭くらいまでの経緯です。

「オーディオの新規開拓は中止」していましたが、原稿に集中していた時期に全く聴かなくなっていたわけではありません。QUTESTはもう動きませんが、これまでデータトランスポートとして用いていたFiiO R9はDAC機能もありますので、ここからRCAインコネをPASS HPA-1に繋ぐことで当面を凌いでおりました。

オーディオ稼働時間が激減

原稿に集中している期間は上記のコンパクトな環境で聴くことにしたのですが、このシステムは次第にリスニング時間が減少していくのでした。QUTESTが現役だった頃は毎日のように聴いていたのに、5月に入ってからは週1回1時間というレベルまで稼働時間が激減してしまったのです。

この理由は単純明快で「音が自分の感覚に合わない」から。FiiO R9はDACを通さない単純な「音源の入れ物」として使えば致命的な癖は乗らないのですが(僅かには乗る)、今回のような使い方は完全に生理的に拒否反応が出ました。これを無理に毎日聴き続けると自分の感覚が麻痺してしまうと本能的に感じ、稼働時間を極端に減らすことにしました。

FiiO R9のDACモードの音は客観的に判断して基礎性能的には特に問題はなく、むしろ優秀な部類に入るでしょう。低音側のレンジ感や左右空間の広さにおいてはCHORD QUTESTより優れています。しかし私は上記のように「生理的に受け入れられる音」というフィルターを通過しないと日常使いでは採用できません。これはいくら基礎性能が高くても関係がなく、独立した項目として存在するのです。

ではFiiO R9のDACを通すと、どのような部分が私の感覚と合わないのか。

音楽としての表情が見えないのに、オーディオ的な情報量や音の厚みばかりがやたらと意識させられるという、そのアンバランスな出音が不自然に感じられるのです。また、「明るいのに暗い」雰囲気が常に漂っているのも気になります。「明るい」というよりは、背景の光が青味を帯びて照らしてくる感覚があり、音色はそれと対照的に暗いというのがFiiO製品に共通したキャラクターであると私は解釈しています。据え置き機材だけでなく、DAPのM15やM17、ポータブルDACアンプであるQ7でも価格帯に応じた性能の振り分けをしつつも基本的な音色のキャラクターは上記の感触で統一されています。

north star design Supremo 購入

さて、夏コミは結局落選してしまい原稿は宙に浮いた状況になりましたが、当面は締切日程を意識する必要がなくなったので、6月の第2週から新DAC選定の情報集めに入りました。当初はnorth star designは候補に入っておらず、実はPlayback Design「Melrot」 の出物を待ち続けていたのですが、5月の原稿作業中から定期的に各所をチェックするも全く入ってくる様子がありません。そもそもの生産数が少ないままディスコンになってしまったのでしょう。そうこうするうちに夏コミに落選してしまい、いよいよ「オーディオ絶ち」が精神的に辛くなってきました。

ここはMerlotを一旦諦めて、今出回っているモノの中から選ぶことに方針を切り替えました。そして購入したのが中古のnorth star design Supremoです。

同社は既に活動を終了したメーカーではありますが、Supremoより下位の機種を含めると現在においても中古市場にはそこそこの数が出回っていることから、一定のレビュー需要はあるかもしれないと思い、この記事を書くことにしました。

毎日楽しく聴けることの幸せ

Supremoを導入してから、我が家のQUTESTが存命だった頃のように毎日30分でもいいから時間を捻出して聴くというスタイルが復活しました。もちろんQUTESTと音の様相は異なりますが、生理的に自分に合う音の範疇において新しい方向性に着地しつつあるということです。

QUTESTでは左右の空間が狭く、定位が緩いという弱点を抱えていますが、声や弦楽器の音色に独特の美しさを備えており、発色がカラフルで基底の色は黄色側に寄るというものでした。このため、決して万能型ではなく相性の良い楽曲やジャンルは限定されますが、ストライクゾーンに入るものを再生すれば価格を超えた価値を見出せる製品でしょう。

これに対して、新DACとして迎えたnorth star design 「Supremo」は、左右の空間はかなり広がっています。とても広いというレベルではないけれど、妥当で自然なステージの大きさ。音像定位についても、ものすごく精緻にピンポイントで定位するわけではないが、標準的なレベルには達しており不満はないです。ただ、QUTESTは緩い代わりに音像周辺に(付帯音ではあるだろうけど)ふわっとした微細な情報を纏っている感覚がありましたが、Supremoではそれがサッパリ削ぎ落されている。客観的に見ればSupremoの方が「正しい」在り方なのだとは思いますが。

音色面に関しては、Supremoは多少演出的に振った意図は感じられるものの、QUTESTほど個性的ではなく、音楽的に楽しく聴けることと中庸さのバランスが上手く調和しています。DACがES9018ということもあり、QUTESTの暖色系とは逆で若干の青味を帯びた寒色系に感じられる場面もありますが、決して無機質ではなく、むしろ有機的なのです。ここがFiiO R9のDACを通した時の音と決定的に異なる部分であり、私がオーディオにおいて求める最も重要な要素なのです。

極論を言えば、私にとってDACチップは何でも構わない

FiiO R9に搭載されたDACはES9038Pro、それに対してnorth star design Supremoは前身のES9018です。よって、単純に最新型や測定上の高性能を追い求める層は、次世代チップであるES9038Proの方が優れているという結論になりがちです。

そのような人々から見れば、FiiO R9のDAC機能を殺して古い世代のDACをわざわざ通している私の構成は不可解に感じられるでしょう。(異なるメーカー同士の製品でこのような論旨の展開を行うことはあまりにも雑ではありますが)私が申し上げたいのは、細かな諸特性の優劣で製品を判断するよりも、まずは自らの耳で聴いて、その音が「肌に合っているか」これが何よりも重要なことではないかということです。

夏のヘッドホン祭 mini 2025

前回更新が4月なので3カ月の間隔が空きました。実は夏コミの評論カテゴリーで「合同誌」を発表する画策をしており、私も執筆メンバーの一員なのですが、結果的には抽選漏れによる落選となりました。直近の2カ月はその原稿の準備期間に充てていたという次第です。原稿は一旦塩漬けの形となっていますが、いずれきちんとした形で発表したいとは考えています。ただし今年の冬コミは平日開催となっていて年末スケジュールが合わず見送りとなりました。よって来年に向けた長期スパンとなりますが、頭の片隅にでも置いて頂けたら幸いです。

 

さて、本題の「夏のヘッドホン祭 mini 2025」に入ります。私自身は直近の数回のイベントは夕方から入場して数か所回って終わり、という感じのライトな付き合い方でしたが、今回は丸一日の休みを取ったので開場前から並んでいるという、珍しく気合の入ったスタート。

飯田ピアノ

Soltanus Acoustics 「Euridiche」

Aurender → Bricasti → ifi

静電型HPということで同社の「Electrostatic Headphone Driver Unit」も期待していたのですが、それは叶わずifiのアンプが用意されていました。

装着時に耳の中の空気が圧縮されて「シュポン」と鳴ります。これ私はかなり気になります・・・

音については、正直違う静電型ドライバーユニットでもう一度聴かないと判断が難しい印象。まだ音がこなれてないのかもしれませんが、空間の左右が狭いこと、また表情が硬く音楽的な表現が今一歩引き出せていない感じがしました。

左側の席ではCamertonを再度試聴。これは過去ログで何度か触れているのでヘッドホン自体の音は省略しますが、今回に関してはそれまでの印象として強かった「膜を張ったような低音の存在感」がその主張を少し弱めていて、以前よりも聴きやすく好感が持てました。構成については、トラポとDACはAurenderとBricastiの上位機で、DVASのアンプをAyreのプリでボリュームコントロールするという贅沢仕様。何だかとてもハイエンドな音がします。好きな人は絶対好きでしょう、この音は。DACとトラポは左右の席でメーカーを揃えているので、私が想像するにAyre KX-Rの風味が上手い仕事をしているのではと推測。また、Camertonの私なりの解釈としては、ハイエンドオーディオ的な文脈にマッチするサウンド傾向で、それがトータルの環境とピタリとハマっている感覚がありました。

ブライトーン

ZMF 「Aegis」
私の持ち込んだSG、ュカシ夛氏のVerite

整理券の試聴時間枠30分をュカシ夛氏と半分に分け合い、さらに7分ずつSGとVeriteに区切って同じ曲を聴いて判断するという手法を取りました。楽曲は以下。


www.youtube.com

音はかなり事前のイメージと異なりました。かなりアタック成分が強く、表情や表現力の片鱗は感じ取れるものの、そこに辿り着く前に耳が疲れてしまう・・・

インピーダンス切り替えスイッチはSGに関しては明らかにLow側、Veriteは最終的にMidに上げましたが、圧も余計に強くなるのでLowでも良いという判断もあると思います。

タイムロード

ERZETICH 「Phobos

ERZETICH 「Charybdis」

スロベニアの平面駆動型ヘッドホン2種を試聴。

Phobosは QUTEST→ALTO

Charybdisは DAVE→US 5 Pro

どちらも昔のAUDEZEを意識させるような大柄で無骨なデザインですが、ERZETICHはよりメカニカルな印象を持ちます。Phobosはダークな音色でモニター的、Charybdisは明るく音楽的という性格の違いはありますが、基礎的な性能については両者でそれほどの違いはないかなと思います。どちらも共通して子音の掠れが強い点は気になりますし、Charybdisの方が細やかで質感が滑らかというわけでもないので、音のキャラクターとしてPhobosが好きな方はそちらを素直に選んで問題ないでしょう。また、AUDEZEのような、強い音が入ってきた時に余裕を持って受け止めるような懐の広さをERZETICHは持ち得ていない印象があって、このヘッドホンは小音量リスニング向けなのかなと感じました。

Brise

WATATSUMI → UTOPIA SG

WATATSUMIを初試聴しました。価格に目を瞑れば、TSURANAGIからの進化として今のBriseの到達点と考えた時に、見えているステージは着実に広がっているので素直に褒めたいと思います。かつてのBriseというのは「Briseが良い音と解釈したサウンド」がどんな場面もずっと固定化されて展開し、代わりに「音源に込められたもの」がマスクされてしまうという印象を持っていました。WATATSUMIでは、この傾向からある程度脱却できている感覚があり、音源なりの表現の幅の広さというのを感じ取れるようになっています。依然として「ブリスサウンド」は残りますが、音源の表情を引き出すこととのバランスが取れるようになってきた点は進歩を感じます。

STAX

SRM-T8000(オプションDACボード入力)→  007S

新製品の007Sを聴きました。高域がブライトで背景が白飛びするのは元々STAXの傾向として存在するのでそこは置いておくとして、私が気になったのはT8000のオプションDACボード。正直これは本来のSTAXの長所なり強みを薄める方向に作用している気配があって、設置スペースの問題なりシステムの簡略化が目的でない限りビルドインしない方が良い気がします。私が過去に試聴してきたSTAXというのは、もっと質感の丁寧な表現があったはずなのですが・・・

HiFiMAN

EF1000 → SUSVARA UNVEILED

EF1000は初試聴です。SUSVARA UNVEILEDは何度か試聴していますが、今日のこの組み合わせが個人的には最も納得感のある出音でした。RIVIERAは確かに濃厚ではありますが、「温もりがありつつ爽やかに音が抜ける」今回のEF1000と組み合わせた音の方が世界観のイメージとして納得できるということです。アッテネータの目盛りが粗く、ちょうどいい音量に当たらない点は惜しい。

 

ケーブルセッティングの基本

ラック裏の配線模様を公開します。

壁コンの上側コンセントが現在のオーディオに関係する経路で、ラックの中を通してから赤矢印が示すように奥の裏に隠れているAudio Replas製電源BOXに入ります。

白いLANケーブルを含め青で囲った部分は無視してください。壁コン下側のコンセントはPCに繋がっていますが、現在はトランスポートがFiiO R9であり、音楽再生時はPCをシャットダウンしています。LANアイソレータはRoonを活用していた時代の名残でそのままになっています。

 

ケーブルセッティングの基本

オーディオケーブル本来の性能や音の個性を十分に引き出すには、以下の項目を意識してみると良いでしょう。

  • お互いのケーブルを接触させず、できるだけ離す
  • 床や壁に接触させない(次善策や調音目的でケーブルインシュレーターも有効)
  • やむを得ず接近する場合は、なるべく直角に交差させる(平行に這わせない)

基本的にはこれだけです。しかしながら、現実的には個人環境の様々な要因から完全には達成できないケースが多々あります。以下が挙げられるでしょう。

  • ラック裏のスペースが狭い
  • ケーブルの本数が多い
  • オーディオ用ケーブルの多くは太く硬く重い、曲げ半径が大きい

私も正直、今のケーブル構成に至るまでは非常に苦労しましたし、壁に張り付き床を這いつくばる有様を眺めては、半ば諦めて放置している時期も長らくありました。

ある時、これではいけないと決心し、ケーブルの本数を可能な限り減らして、取り回しの良さをある程度重視したケーブル選定に舵取りを変更しました。

結果的には「音のストレス、ざわざわした感じ、滲み」といった要素が減少していたので、この方向で行こうという判断になりました。

そもそもケーブルが互いに干渉することを知らない?

正直に言って上記の「基本」は、オーディオを趣味とする人間であれば誰もが知っているレベルの、半ば暗黙知として共有されているものとばかり思っていましたが、どうも近年は事情が異なるようです。

「絡んだり束ねていたケーブルを解いて整理したら、音がスッキリして良くなった。これだけのことで変わるんだ」と驚かれている方を直近で数名見かけました。

そういった声を後押しする意味でも、「ケーブルセッティングの基本」というトピックを立てることにしたわけです。

どうも現代SNSの隆盛によって、過去のインターネット情報資産へアクセスすることが難しくなってしまったのかな、と思うことがあります。他にも現代SNSについては書きたいことがいくつかあるのですが、論旨が本件から外れますので次回以降に。

CAMERTON Binom-ER 試聴記 ② @オーディオユニオン ハイエンドヘッドホン館

オーディオユニオンのハイエンドヘッドホン館にて。CAMERTONの試聴機が今日で引き上げられてしまうので駆け込みです。

環境は以下の順で試聴しました。

 

① Cayin N8(持参)⇒ CHORD Hugo TT2(Hypsos電源付き)⇒ DVAS  Model 2

② dCS Lina Network DAC+Clock+HPAの3点セット

③ dCSのDACとクロックはそのままで、アンプをLuxman P-100に変更

 

②と③はネットワーク接続のRoon+Qobuzで聴きました。

 

前回の試聴記 in中野ではBoulderだったので今回は外しています。

これでCAMERTONを都合4種の環境で試聴することができたわけですが、ここまで機材の性格や性能を如実に反映するとは・・・

このヘッドホン自体の音の個性も確かに強いと言えば強い。けれども、そういうヘッドホンというのは過去の事例で言うと、あまり環境追従性がないパターンが多かった。

CAMERTONは、UTOPIA SGとは全く性格が異なるヘッドホンではあるけれど、「システムを詰めていくやりがいのある」存在であることは同じ。そのような意味では希望が持てます。

ただし・・・後述するように、「私の音に寄せていく」のはなかなか困難だろうと感じました。

 

まず、①の環境について。クラスは1つ下ですがCHORDのDACを家でも使っていますので、ある程度の指標になり得るだろうと考えて選びました。

Boulder直結よりは空間が広くなり情報を捌けるようになった感覚があります。「モワモワ感」は依然残されていますが、Boulder直結で感じた「粘り気」はかなり薄まりました。これはDVASの長所が上手く活きているのだと思います。駆動力があって音場も広く、ヘッドホンによっては若干ドライに感じるのですが、CAMERTONとは上手くバランスが取れているのでしょう。

 

ここで②の環境に移ります。個人的にはCAMERTONのセットアップとしてはひとつ弱点があるものの、dCS Linaのフルセットが最も「ニュートラル」かな?という判断をしました。

①で感じた「モワモワ感」は減退し、だいぶ空間がスッキリしてある種の「清涼感」まで感じられたので驚きました。dCS Linaってこういう世界観を目指してたのかな、と。

帯域バランスそのものは、そこはCAMERTONやはり低域が強いことには変わりありませんが。

弱点としてはLinaのヘッドホンアンプ単体で見た時に駆動力が弱いからなのか、左右空間がかなり狭く音像の彫りが浅いと感じました。筐体サイズを小振りな3ピースで揃えたことで物量が必要なアンプ部が弱点になってしまった印象があり、Linaの世界観こそ面白いなと思うもののトータルのクオリティとしては惜しいなと感じました。

そしてCAMERTONはやはり広めの空間で情報を捌いてやらないと、密度が濃すぎて飽和感を覚えるのですよね。。。

よって、DACは固定したままヘッドホンアンプを変更してみようということで③に移ります。

 

Luxman P-100に接続すると左右空間の狭さは解消されました。それは良いのですが、DVASのような質量がありつつも音離れの軽快さを感じる方向ではなく、Luxmanは音が重たい。また、Boulder直結のレベルではないものの、再び「モワモワ感」が顔を覗かせる塩梅に😓

これは上流もLuxで統一したら多分クドいだろうなぁ・・・

 

この先はまだ上手く言語化出来ないのですが、UTOPIA SGとCAMERTONはどちらも「環境追従性」は高いのですが、その振る舞いが両者で異なる印象があります。そして変化幅がCAMERTONはあまりにも大きく、「自分の音」というのが事細かに決まってしまっていて、そこに寄せる方向性でセッティングを整えていくタイプ、つまり私のような者は非常に扱いに困るのではないかというイメージです。

逆に、そういう大きな変化をポジティブに楽しめるタイプの方、未知の音をどんどん探求していきたい方はCAMERTON向きと言えるかもしれません。

 

個人的には、音の弾力感や粘り気が薄くなった時は多くの項目が見えるようになって、弦楽器の表現力もある程度及第点に達するのですが、それでもUTOPIA SGの方が好ましいと感じました。CAMERTONは音像の線が太いままで、細く伸びていかない印象です。

Camerton Binom-ER フジヤエービック店頭試聴会

枠は20分で、私が到着した時点で待ちが多く整理券を渡されて、1時間後に戻りました。

左端見切れてますがBoulderのXLR4直結で下のMOONは通ってません。

 

Impression📝

  • 帯域バランスが独特(昔のAUDEZEに近い)
    低域の量感が多く、ややボンつく
    中低域にかけてボワボワと被る、くぐもった感じ
    高域は基本的に刺激を抑えた音作り

  • 声の実在感は高評価 (岩男潤子「ここにいるよ」)
    ここは一番感心した
    UTOPIA SGより明確なストロングポイント
    質量感を伴って「ここにいる」のが見える

  • 質感はマット寄り
    基本的にはのっぺりしていて表面の凸凹感が均されている
    弦の表現は私の好みから外れる

  • 「場の空気」がぶわっと大きく動いている気配が感じ取れる
    この感覚をヘッドホンで体験したのはおそらく初めて

  • 左右ユニットに音が張り付かず、きちんと空間に出てくる
    D8000系やSUSVARAは音が空間に出てこない

 

正直現時点では「個性的すぎて判断が難しい」

ストロングポイントだけ見れば飛び込む価値はあるかもしれない、とも思える。

それほど、「ここにいるよ」の実在感は際立っていた。

しかし中低域の被り、くぐもった感じは気になり続けるだろう。

昔のAUDEZEっぽいとは書いたが、音色はむしろ僅かに寒色系な印象を覚えた。

質感はマットなのだが、無機質であるとか演奏の機微が見えないという方向性ではない。

音の性格の要素的組み合わせが今までにあまりないタイプ。

「場の空気」がぶわっと動く様子が明確に感じ取れたり、音がちゃんと空間に出てくることから、ポテンシャルの高さはあるのだろうと思える。

個人的には100万円のプライスを考えるにあたって「SUSVARA UNVEILEDよりは面白い」とは言える。

お気に入りクラシックアルバム紹介:ベートーヴェン編

実は意外にも紹介する枚数が少ないベートーヴェン