final D8000

*旧ブログにもD8000のReviewは書きましたが、現行のアーカイブに再投稿していないため、3年経過したこともあり完全に新規で構成します。

 

2017年12月に発売されたfinal D8000ですが、私は翌年2018年秋のヘッドホン祭にて、物販で購入しています。当時は開場前に朝並んで物販の整理券を受け取り、順次入場する段取りになっていましたが、あまり私は気合を入れて物販の列に並ぶようなことをする性格ではないので、昼過ぎにふらっと入場して一通り目当てのブースを試聴し、最後に物販を眺める(そして何も買わない)というのがお決まりのパターンでした。ところがその時はD8000が奇跡的に残っていたのです。通常の定価388000円→328000円だったかな?朝並んで整理券を貰う人が、必ずしもハイエンドの方に興味があるわけではないのかもしれません。もしくはポータブルオーディオの方でイヤホンには注目しているのか。

物販リストにD8000があることはチェックしてはいましたが、まさか夕方まで残っているとは思っていなかったので全く予定外の出費でしたが、今では本当に買って良かったなと。

 

3年の期間でDACとHPAは以下のように変遷しています。

① MHDT PAGODA→Audio Design DCHP-100

② CHORD QUTEST→ENIGMAcoustics Athena A1

③ QUTEST→RE・LEAF E3 Hybrid dC

D8000は環境追従性の高いヘッドホンではありますが、基本的にどのような環境でも音楽として破綻しない帯域バランスで鳴ってくれる扱いやすい存在と言えます。もちろんこの①~③において、それぞれ細かい点で不足を感じる部分はありますが、このヘッドホン特有の「低域のエアー感」は共通しています。以前Senn HD800を使っていたときは、特に打ち込み音源では「硬い物が衝突してくる」ような質感でしたが、D8000では「その周囲の空気」が一緒に押し出されてくるのです。それによって僅かにふわっとした質感が伴い、これを私は「エアー感」と表現しています。

先の『①~③における、それぞれの不足』とは

①左右空間狭い・高域の滑らかさがいまひとつ

②では、①は改善されるものの、中域に低音が被る

③は、②を解消するが音楽的にやや素っ気ない部分がある

ただし、この「それぞれの不足」は、日常的なリスニングにおいては致命的な問題にはなりません。前提として私が設定した高い水準をクリアした上で、あえて弱点を挙げるなら・・・という感じで書いてます。

例えば、HD800は実は相当な駆動力でドライブしてあげないと、低域の量・質には不満が残ります。また、Focal Utopiaは、HPA側に駆動力の高いものを用意しても、トータルの環境で少しでも問題があれば、ローは暴れてハイはキツく厳しい表現となります。Utopiaはユニットの能率が高いので鳴らすだけならDAP直でOKです。ただし上を目指したときに破綻が出やすいのです。D8000は、環境を奢ればそれにしっかり追従する性能があると同時に、何か問題を抱えたシステムでもUtopiaほど厳しくそれを露呈しないということです。それでも、高みを目指したときの限界点はUtopiaの方が上な感じがします。低域のスケール感はD8000に分がありますが、微小音の再現性はUtopiaの方がより拾うからです。それは音数・定位・空間のレイヤー構成の緻密さといった要素に反映されていきます。

私は「性能限界」を追求する方向よりも、D8000特有の「エアー感」を上手く利用する方を選びました。階調感のあるカッチリとしたマルチビットDACから、音の繋がりが滑らかでふんわりした質感のCHORD QUTESTへ、さらにAthena A1で真空管のテイストを取り入れてみました。それで2年くらい通してみたけれど、やはりD8000本来の性能をもう少し引き出してやりたいと思い、E3 dCへ・・・という変遷でした。

将来的には、QUTESTがRCAのみなのでXLR出力のDACへ更新する予定ですが、同じCHORDのDACを選ばない選択をした場合でも、D8000の「エアー感」はなるべく減らさない方向にするという方針はそのままです。

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