ASRで諸特性がすぐに分かってしまう時代だからこそ、それにイメージが引っ張られないことが大事。聴いた時の直感的な「これ好きな音だ」っていうのを大事にしよう。
— yuki (@flusso_bianco) 2022年12月15日
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— yuki (@flusso_bianco) 2022年12月15日
PassのHPAは5年前に一度聴いただけで、D8000登場以前の時代だ。私の経験値も、まだまだ足りなかった。それでも、「音色の良さ」は瞬時に分かった。今聴いても、その点においては同じ評価をするのではないか。
PassのHPAはRCA入力と6.3mmシングルエンド出力のみ、ゲインのLow , High切り替えもない非常にシンプルな構成です。それで50万円という価格でありながら測定値は散々な結果であれば、あちらの「住人」からは恰好の批判の的となるでしょう。
そもそも当時PassのHPAを試聴して私は特性が悪いとは全く感じていませんでした。とても細かい情報が出て、繊細な表情の機微が読み取れるから。そして何より音色の幅が広くて、なおかつ色付けが濃すぎない適切さを保った素直な表現が気に入りました。
このような機器を見つけるのは、実は想像以上に難しいのです。ASRで高評価されている中華製品を積極的に購入する、また試聴することは少ないのですが、半年くらい前に高価格帯でも性能の良さで絶賛されているBenchmark HPA4を聴いてみました。低歪でレンジが広く、いかにも性能の高そうな音が出ていますが、心に響くものがなく素通りしてしまう印象でした。何を聴いても同じような表現で淡々としているのです。
高性能な機器をそれなりに聴いてきた現在から振り返れば、PassのHPAは特性が悪いということも気付けたのかもしれません。それでも私は「音色が良い」というのはそれだけで大変貴重な存在だという価値観は今も変わらず持っています。むしろ色々聴いてきたからこそ、その考えは強化されたとも言えます。「S/N」を上げることばかりに気を取られ、それによって失われたものに自ら気付いていない物が、どれだけ溢れていることか・・・
そしてこの「音色の良さ」は、画一された答えがあるものではないのです。きっと「心地良い」と感じる音色は各人微妙に異なるものだろうし、それを各々が表明していくことが趣味の多様性でありコミュニティの活発化を促すものでしょう。
本来オーディオは各メーカーの「音触」とでも言いますか、モデルごとに多少の性能の違いはあれど基本的な「音の質感」は共通したベースの部分が存在していたものです。それなりに歴史あるメーカーの製品を10年単位で聴いていれば自然と分かると思います。しかし近年は最初から測定値を理想へ近づけることに主眼が置かれ、製品ごとの音色がバラバラな新興メーカーも多いように感じます(特に中華系で顕著)。なので余計に「音色」の面から自分の好きな音を探求するという視点が持ちにくいのではないでしょうか。