GOLDMUND Telos Headphone Amp 2 試聴記

新発売で今が旬の製品ではなく、2015~2020年あたりに登場して話題になったモデルを振り返ってみようというシリーズの記事が何回か続きます。中古入荷された個体、もしくは店舗常設展示機での試聴です。

 


① 4月にCayin N8DAPのDACを通してANALOG INでSUSVARAを

② 8月はUSB INでムンド内のDACから複合機としてD8000Proを聴きました。

 

①の感想📝

能率の低いSUSVARAではvolume3~4時くらいで、現実的にこの組み合わせでは厳しい。前面・背面にゲイン調整がなく、「トップパネルを外してアクセスする」必要がある。そこまでは試せず。

高級アンプらしい音の濃さ、密度感であったり、ガッツリ駆動している制動感が弱い。かといって、クリアで晴れた音でもない。音場全体にクリーム色っぽい背景や質感が常に乗っかっている。これが「ムンドの音」なのであろう。

情報量の少なさはANALOG INで試聴したから、DAP由来?

 

②の感想📝

ムンド側のDACを通してみるが、情報量は正直DAPと大きな差はないとすら感じるレベル。元のプライスを考えると納得感は薄い。D8000Proならvolume12~1時で、同じシングルエンドのPASS HPA-1は11~12時。

帯域バランスはかなり腰高。濃く熱く、鳴りっぷりが良い傾向とは正反対で、全体的に薄く軽い。ProよりD8000無印の方が量感を補ってくれるのでバランスは整うけれど、どちらもこのシリーズのコンセプトである「深く速い低音」の真価を発揮できない。

 

GOLDMUNDの音

①・②を通した全体の印象として基礎性能、駆動力は平凡で、元の価格を考えると明らかに悪いと言えるレベル。これは「ムンドの音」に価値を見出して惚れ込んだ方が手を出すべきで、また私が短時間の試聴でその真髄の全てが汲み取れるわけもないのであって、本来は記事化するべきではなかったかもしれません。

(電源投入後1時間経ってから本領発揮するという方もおられます)

何を聴いても確固たる世界観が構築されていることは確かです。背景はクリーム色なのに、ひんやり冷たい質感。それでいて乾いておらず音に潤いを感じる。この様々に相反する要素がムンドの最大の特徴と思いました。

表面の毛羽立ちが刈り取られてツルツルした感じがないのは私の好みではあるけれど、基礎的な解像度の低さが惜しい。これならもっと細かいところまで見てしまいたくなるので。

どの瞬間を切り取っても同じトーンで鳴るし、そこに原音忠実性は無視されていると言ってもいいのに、不思議と「音楽としての訴求力」は備わっています。ある意味でハイエンドオーディオとしての「ポリシー」は貫かれている。

反対に、音源なりの「自在性」は捨て置かれています。PASSの場合、ここまで音色を強制的に染め上げる気配を感じない。薄化粧として補助的に引き立てるそのバランスが秀逸で、長く所有していても飽きが来ないと確信できたからこそ導入を決めた部分もあります。

 

次回も別の機器で「高級HPA試聴記」シリーズを予定していますが、基礎性能や駆動力はそちらの方が明らかに良かったです。ムンドはDAC込みの複合機で、他の比較対象は単体アンプが多いため同列に取り上げるのは些か乱暴である気もします。ただしTelos 2であれば、これ1台+ヘッドホンで完結し「メーカーが想定された音が確実に提供される」ことも確かです。