AK4199+AK4499EXへの期待

S.M.S.L D400EX  139000円

先の記事で60万円のDAP SP3000を取り上げた後だと、こちらがとても安く見えてきます(笑

今までの私なら「どうせここらの中華系は特性良くても音は・・・」って見向きもしないですが、ちょっとびっくりするようなレビューがありました。

innocent-key.com

記事は非常に長文ですが、じっくり読み直す価値はありますので。

全体を再解釈して、私の体験とともに思考整理の場としてこの記事を投稿します。

100万円オーバーの高級DACも、全てが完璧ではなかった

今まで試聴したことがある海外製の高級DACを挙げてみます。

CHORD DAVE 

この数年ずっとQUTESTを使っている私ですが、次は違うメーカーの製品を選んでみたいのでDAVEへのアップグレードは考えていません。何度か試聴してみましたが、後段に単体HPAを通しても横方向への音場展開が狭くて、スケール感が小さくまとまってしまい駆動力が弱く感じます。広い部屋でスピーカーを使って聴くなら奥行方向の距離感の緻密さが効いてくるのではないかと想像していますが、ヘッドホンリスニングの場合ではその恩恵があまり発揮されていない印象です。

dCS Bartok

CHORDのサウンドとは対照的な、直線的で勢いのあるガッツリした聴き応えがありました。音場も広くて密度が濃いので、満足感があります。駆動力の高さはダントツでしょう。

しかし質感が非常に硬く、声にも粗さが出る点が人を選ぶ音だと思いました。デジタルフィルタの設定次第で多少は緩和できますが、それでも根本的な傾向は同じです。

MSB discrete

基礎性能の全ての要素が高レベルにまとまっているけれど、CHORDやdCSのような意図的に構築したオーディオ的な個性をあまり感じられません。駆動力が弱いわけではないのですが、どこか淡々として心的な揺さ振りが小さいんですよね。。。DAVEそしてBartokは個性的であるが故に弱点も明確ですが、だからこそ聴く側の心を動かす力も大きいです。

中華DACは、いよいよ聴感とスペックの乖離が埋まりつつある?

紹介した記事でS.M.S.L D400EXの評価をそのまま受け取るならば、実は基礎クオリティで各項目のバラつきがあった海外ハイエンドDACの、それぞれ一番得意としている項目以外についてはD400EXの方が上回っていることになります。これは個人的にはかなり衝撃的な内容でした。

DAVEは高域情報量、Bartokは駆動力が強みですが、別にユーザーがその項目を重視しないのであれば「どの項目も万遍なく90点に近い」製品が安価に購入出来るようになってきたのです。

これまでの高特性を目指した中華製品の多くはヒステリックで線が細く、駆動力が弱く平面的な音場展開であり、それなりに経験を積んだ「音楽をしっかり聴いている」方には敬遠されてきたのが実情でしょう。

「まだまだ既存のハイエンドが、これら中華製品に食われることはない」と、私も高を括っていたわけであります。

高レベルな基礎特性と豊かな音楽性の両立を、現実的な価格で

市販のDACチップに頼らず、FPGAに独自のプログラムを書き込み設計していく方法は多大なコストを要します。それは既存のDACチップの「デジタル段」で出来ることに制限があったからでしょう。

AK4191+AK4499EXが、適切に組み込み物量を投入すれば高いレベルのオーディオマニアの要求に答えられる製品であるならば、これは「共通のフォーマット」として一定以上のコストを抑えられることになります。よって、そこから先は「音楽性の追求」により早く着手できるわけです。

オーディオ的に高レベルな基礎特性の確保を「特別な手法」に頼る必要がない時代が、いよいよやってくることになりそうです。聴感とスペック上の乖離も埋まってきて、多くの人にとっては中華製品で十分になってしまうでしょう。しかしそれは市場が中華で埋め尽くされることには決してならないだろうと思っています。むしろ彼等はどこかで頭打ちになり、その後の方向性が見えず停滞するのではないかと考えています。

高レベルな基礎性能の土台が以前より構築しやすくなったことで、「音楽性」による差別化がより見えやすくなる将来を私は期待します。それは元々欧州系のメーカーが得意とする分野であったし、そこに多少中華との価格差があっても、現実的に手が届くならば魅力を感じる人は私含めて存在するはずです。