リケーブルの是非

final A8000とSHANLING M8でポータブルオーディオをスタートさせてから、そろそろ1カ月です。購入の翌週には4.4mm5極シルバーコートケーブルを注文しましたが、取り寄せに時間が掛かっている模様。せっかくなのでmmcx→4.4mmプラグの他社リケーブルをいくつか試聴してみました。

finalのmmcxは自社開発で篏合の精度が高いので、変に安い中華プラグを採用しているであろう安価なリケーブルは除外しています。

DITA OSLO

DITAとfinalが共同開発した「糸竹管弦」に採用された、リケーブルとしても単品販売されているOSLO。mmcx側の緑化が強い中古でした。

音はA8000のセンシティブな高域を少し和らげて空間を広くして、聴きやすい方向になります。代わりにA8000特有の透明感が減退する印象でした。

Beat Audio Cyclone 8-Wire

A8000本体よりリケーブルの方が高額になって現実的ではないのですが、一応聴いてきました。暖色系で厚みがあり、ハイエンドらしいゴージャス感に溢れています。

据置でハイエンドケーブルを聴いた時の感覚に近いものがイヤホンのリケーブルでも実現できています。

リケーブルの是非

ヘッドホン祭でBriseのYATONOを聴いていますので、それを含めて直近で3本のリケーブルを試聴したことになります。全般論として、ポータブルオーディオのリケーブルは音への支配力がかなり高いと感じました。単体アナログアンプを挟まないDAPとイヤホンのシンプルなシステムなので、ケーブルの音質がストレートに出てきます。

かつて据置ヘッドホンシステムでDAC+HPA複合機を、電源はACアダプターをそのまま使用していた頃を思い出します。HD650を使っていたPCオーディオもまだまだ黎明期の時代ですね。あの頃はヘッドホン側のリケーブルではなく、PCからDACに繋ぐUSBケーブルに特に拘って色々試していました。

HD800をリケーブルすると、Sennheiserの意図したサウンドから外れていった

私とHD800の付き合いは長く、2012年頃から6年に渡ってずっとメインで使い続けてきました。その間、記憶している限りでリケーブルは4本くらい試しました。

FURUTECHやAnalysis Plusの他に、ヤフオクで個人製作出品されている方のオーグラインを採用した4芯ケーブルや、102SSCの16芯編み込みケーブルを買ってみました。

この中で、102SSCは気に入って一番長く使っていたのですが、結局最終的には標準の布巻ケーブルに戻しました。

かなり久々にHD800を本来の姿に戻して聴いてみると、このヘッドホンは付属のケーブルが実はSennheiserの音作りの重要なピースを担っていることを改めて実感したのです。広いことは広いけれど左右に壁を感じる独特な空間、メリハリやコントラストを抑えた滑らかな音の繋がり、ほのかに温かみのある色温度は、分析的に聴き込む上では物足りなさを感じる場面があります。

リケーブルによって確かにこれらの物足りなさは解消されますが、今度は音楽的に何を表現したいのか、その方向性が見えなくなる印象でした。特にFURUTECHは典型的。

final A8000の完成度の高さ

HD800でこのような経験をしたので、D8000ではfinalのシルバーコート以外はリケーブルを購入していません。そもそも、サードパーティー製の選択肢が少ないということもありますが。(ヘッドホン側のロック機構を無視すれば、3.5mmモノラルなのでそれなりに選べるとは思います)

そしてA8000。他社製リケーブルによる「違和感」をとても敏感に出してきます。付属のシルバーコートケーブル自体が高品質なので、安価な中華ケーブルが大量にありますが、おそらく大幅に音の品位が落ちるでしょう。mmcxの精度が悪いプラグは本体を傷めますのでその点も注意が必要。

Beat Audio Cyclone 8-Wire では流石にランクの高さを感じさせますが、もはやこのケーブルの音を聴いているような印象で、A8000本来のキャラクターが隠れてしまっています。DITA OSLOも悪くはないのですが、これなら私は付属のシルバーコートの方が良いです。このような調子なので、結局他社製リケーブルでA8000の「音楽性」を含めたチューニングを、リケーブルでより高めるのは(イヤホン本体を超えない現実的な価格では)難しいという結論に至りました。

大人しく4.4mmバランスの納品を待つしかなさそうです。2.5mmは在庫あるんですがあの規格は信用してないんですよ・・・