Focal UTOPIA SG 試聴記

ヘッドホン祭で整理券を逃したUTOPIA SGを聴いてきました

dCS Bartok(XLR)→ NiMBUS US5 → Focal UTOPIA SG (XLR4)

Bartokはvolumeを通過するプリモードで試聴。最初0dbにしていましたが撮影直前はDACを-6dbくらいに下げてUS5を2時くらいまで上げてみたり、色々試してました。これで結構音の感触が変わります。普通の聴き方なら11時~1時あたりを使うと思います。

SGを聴いて初代との印象を比較

実売価格

近年の世界情勢が影響して価格は45万円→66万円となってしまいましたが、これでも現在の為替レートから考えれば代理店は相当頑張っています。計算的には全然マージン取ってないどころか、これ泣いてませんか?

重量と装着感

見た目はハウジングの「そ」以外あまり変化がないように見えますが、実は若干重量が軽くなっており装着感が向上しています。初代はもっと側圧があったような気が。ヘッドホン祭で密閉型のStelliaを試聴した際の装着感がだいぶUTOPIA 1stと違って、ゆったりしていて良いなと感じましたが、SGになってその時の感触に近くなりました。

帯域バランス

高域の金属的な主張が抑えられて全体的に聴きやすくなりました。1stはこの鮮烈な高音が痛くないレベルまで音量を下げると、低域が痩せてしまう難しさがあって扱いにくい印象で、結局D8000をメイン機に選んだという経緯があります。

空間表現

1stはあまりにも「音が出る過程」と言いますか、時間的連続性を微視的に掲示させられる感じでした。音が出た後の響きより、その前の瞬間瞬間が「手に取れるほど分かりすぎる」のです。これがかえって音楽的な解釈の探求に集中しにくくなることがあります。

SGではベリリウムドライバの超高性能は引き継いだまま、ここまでの極端な分析的リスニングを強いられる印象は弱くなりました。やはり距離感は近めなのですが、そのステージでの立体感、レイヤーの層の緻密さというのが魅力だと感じます。

色温度と背景色

色温度については、SGでは青味をほとんど感じないレベルでニュートラルに近くなり、背景も1stでは暗い印象が払拭されて明るめになっています。

基本的に、この項目については

「青くてステージを照らす光が眩しい」⇔「黄色がかって光は穏やか」

の度合いでイメージしてくれれば伝わると思います。

定位・輪郭

これは1stとSGの比較ではないですが、普段は平面駆動型のFinal D8000を聴いていると、この項目で差を感じます。ビシッと線を引いたような境界を認識しにくい(それが音楽的なスケール感に繋がる場面もある)のがD8000です。

良く出来たダイナミック型の魅力のひとつに、この滲まない定位の正確さというのがあると思います。イヤホンでA8000を聴いていて思うのは、やはり打ち込み音源はプレーナーよりDDの方が向いているということです。

総評

5年前に初代を初めてヘッドホン祭で聴いた時は、あまりの暴れ馬っぷりに不具合を疑ったレベルだったことを思い出します。当時はSENNHEISER HD800を根本的に凌駕するほどのヘッドホンを見つけられずにいました。UTOPIAはその超高性能ぶりに驚嘆しながらも、あまりの制御の難しさから上級者向けという印象で、あまり広く人に勧めにくいモデルであると私は位置付けていました。

SGではその超高性能は維持したまま、環境の微細な粗をことさらに強調することがなく(試聴環境がハイエンドすぎるという指摘は最もでありますが)非常に扱いやすくなったはずです。私もSGなら割と本気で検討に値する製品に仕上がっていると感じました。

今後登場するであろうYAMAHA YH-5000SEが気になってはいるので、その兼ね合いでタイミングはしばらく待つとは思いますが・・・

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