Dan Clark Audio EXPANSE 試聴記

今日のフジヤさんに立ち寄った用件のメインは、TWSのTecnics AZ60を下取りに出してNoble FoKus Proもしくはfinal ZE8000のどちらかを選ぶことだったのですが(詳細は次回記事を予定)ついでにDCAの開放型も聴いてきたのでこれを先に投稿します。

SHANLING M8→MSB Discrete→Premier HPA

トラポは手持ちDAPにして、普段聴いている楽曲で判断するようにしました。厳密な潜在能力の伸びしろで言えば、DELAなりSilent Angelから送り出した方が良いだろうとは思います。それでも、「普段聴いている楽曲」で判断できる方が私は楽です。

写真の試聴曲は

トレンドを逆行する低能率

近年は平面駆動型でもある程度高能率で鳴らしやすい設計のヘッドホンが増えてきました。final D8000もその系統に分類されるでしょう。

しかしDCA EXPANSEの「87db」という能率の低さは駆動するHPAにかなりのパワーを要求されるので注意が必要です。MSBは100がMAXだったと思うのでほとんど余裕がない感じになります。2割3割しか回せないゲインが高すぎるのも扱いづらいですが、フルパワーで張り付いてしまうのも問題です。

綺麗で滑らかだが、自然な音かと言われると疑問

ある意味典型的な平面駆動型の音と言えます。Mr.Speakersのブランド名だった頃のEtherシリーズは高域にまだピーク感が残っていて寒色系な質感だったし、EXPANSEほど滑らかではなかったです。なので順当に進化していることは感じ取れます。

ただしこれが自然な音かと言われると多少は疑問があります。1枚膜を隔てた向こう側から聴こえてきて「もわっ」とまとわりついてくる質感は独特の癖があります。平面駆動型の一部ではこういう系統のものはありますが、EXPANSEそしてSTEALTHはより強いです。

音場全体を均等な濃さで塗り潰すことで、逆に中央が薄く感じる

原理的には面全体で鳴る故に、中央と周縁で質感や濃さに差が生じにくい性質を持っています。しかしD8000は全体的に濃い中で、さらに中央がグッと聴き応えのあるプレゼンスを持っています。ある意味、ダイナミック型と平面駆動のちょうど中間みたいなイメージです。EXPANSEは均質な滑らかさ、細部まで見た雑味の無さではD8000を上回っているかもしれませんが、面全体が均質な濃度であるが故に、かえって中央の聴き応えが弱く、音が薄く感じる場面がありました。

温度感は中庸~僅かにウェット

僅かに「ウォーム」ではないんです。MEZEのEmpyrean、HiFiMANのSEになる前のHE1000シリーズのような鮮やかさであったり暖かみ、黄色から赤系の背景が見える感じではないので。むしろ前身のEtherシリーズは「青系」でした。それはだいぶ影を潜めてニュートラルに近づき、代わりに「湿度」的なウェットさがEXPANSEでは出ています。

環境追従性はハイエンドクラスの枠組では普通~やや良いレベルに留まるのでは

色々ヘッドホン聴いてきましたが、現状で最もバランスが取れていて環境追従性もトップなのはFOCAL UTOPIA SGと思います。次点でfinal D8000、そこから1ランク落ちて他のメーカーの製品が団子状態という印象です。DCA EXPANSEもこの群に入ります。

粗を出さずにレンジは程々で良い、またウォームで華やかな色付けが不要で中庸さを好む場合はDCA EXPANSEは選択肢になりそうです。