kanata亭訪問記(1)

twitterで以前から交流のあるkanataさんとオフ会させて頂きました。現在はサービスを終了したPhilewebコミュニティで執筆されていた頃に一方通行で読んでいた時代を含めれば、10年近い時を経て実際にお会いできたことになります。これまでスピーカーオーディオ中心に構成されていたkanataさんですが、近年ヘッドホンにも興味を持たれてフジヤさんに試聴に出向かれたり実際に購入されたことで、ずっとヘッドホン専で続けてきた私と感覚を共有できる領域が出来たことも、オフ会にお招き頂けた一因になっていると思います。

*あまりにも全体として長文なので3回程度に記事を分割します

スピーカーとヘッドホンシステムのどちらも凄まじいハイエンド構成で、トランスポートPCの給電方法にも非常に拘りを感じられます。

オフ会は12:30~17:30の実に5時間に及びました。kanataさんからシステム全体の説明をして頂き、前半はスピーカーシステムから聴かせて頂きました。

Playback Designs MPD-8→Bespoke audio Passive Pre→Boulderのパワーアンプ(型番を失念しました)→MARTEN COLTRANE 3

次回記事で紹介しますがMSBのDACともroonのaudio settingで切り替え可能です。今回の初訪問ではkanataさんリファレンスのMPD-8を中心に聴かせて頂きました。

前提として私はヘッドホン専でずっとやってきたので、スピーカー試聴の経験は非常に少ないです。しかしkanataさんのCOLTRANE 3は、誤解を恐れずに言えば「ヘッドホンで普段聴いている時の感覚でそのまますっと自然に聴けてしまう」音でした。スピーカーの背後に部屋の定在波を取り除くAVAAを設置されていることも効いているのではと思います。

まず始めの1時間は全ジャンル横断的にkanataさんが普段聴かれているファイルを再生して頂き、クラシックでは私が知っていて好きな楽曲も一部混ぜてもらいました。

印象的だったのは最近の宇多田ヒカルで(私は普段は全然聴かないのですが)、空間的には色々と弄っているのは分かるのに混濁が無く、綺麗に響きながら音が抜けて「冴えた感じ」さえするのです。五感が拡張されて視覚的にゆっくり音を捉えることが出来ているかのような、何とも表現しにくい感覚なのですが。現代的なマスタリングの巧妙さと、再生システム側の高い基礎能力を掛け合わせた結果このような音が実現出来ているのでしょう。

そしてクラシックの部ですが、私が本格的にクラを聴き始めて3年くらいしか経っていないので、私が普段聴いている曲はkanataさんもファイルで所有しておられるだろうというような思い込みがありました。それもあって私が持参したDAPにはクラシックの楽曲を入れて来なかったのですが、kanataさんのお手持ちのファイルをroon上でざっとスクロールして頂くと、案外自分が好きな楽曲が入っていないものでした。同じクラシック好きでも、その世界は広いので好む領域は案外ぴったりと重ならないものなんだと思いました。

例えば前述のtweet貼付にあるギル・シャハム演奏によるバーバーのヴァイオリン協奏曲は、kanataさんが契約されているストリーミングサービスTIDALからの検索で再生して頂いた楽曲になります。私はこの楽曲がとても好きなのですが、kanataさんはファイルでは所有されていないようでした。そしてこの楽曲をkanataさんのシステムで聴かせて頂くと、普段私が家で聴いている音はかなり色付けした状態で再生していることを改めて認識させられます。というのは背景色が思いっきり夕日色なんですね。kanataさんのシステムではこのような色温度の意図的な操作を行わず、ニュートラルさを保った上で非常に高い基礎性能を活かして多様な楽曲に対応させる印象でした。なので守備範囲がとても広いですね。各要素的に言えばBespokeのプリで質感を引き出し、「冴えた感じ」はMPDが担当されているように感じます。(次回記事で書きますがMSBではこの冴えた感じは目立たなくなりました)