dCS Bartok DAC+ 試聴記

フジヤエービックにて。RE・LEAF E3 dCの電源用にNmode X-PS3のアウトレット品を買いに行ったついでに、今まで聴いていなかったdCS Bartok DAC+を試聴してきました。

環境はネットワーク入力で、final D8000のバランス出力です。DELAのNASにはクラシックからアニソンまで、一通りこなせるように音源もセレクトされてます。クラシック中心ではありますが、途中でLiaFarewell songなんかも挟みながら各ジャンル満遍なく再生しました。

DAC込みのヘッドホンアンプという枠組みでは、これが一番駆動力があると感じました。OJI SPECIALやマス工房のハイエンド単体HPAにも劣らないレベルです。DAC内臓であるが故、ユーザーの音作りの自由度は下がる代わりに、dCSの目指した音はこれ一台(とヘッドホン)で完結して享受することができます。低音が過剰であるとの評がありますが、私はそこまでとは感じませんでした。

CHORD DAVEのヘッドホン出力はこれと比較するとかなり駆動力は弱いです。CHORDのDACは独自の音世界があるので、このDACがどうしても必要だ、という人はおられるでしょう。私もQUTESTではありますがCHORD党(?)の一人。DAVEはDACに徹して外部アンプを用意する、というレベルのヘッドフォニアな方は流石に少ないでしょうが、やはりセパレート構成の究極の一例としては魅力的ではあります。

駆動力は非常に高いですが、想像以上に硬い質感の音でした。低音の量感や沈み込みが過剰というよりは、アタック成分が鮮烈すぎてうるさい印象です。普段柔らかめなCHORDの音に慣れているせいなのかもしれませんが、ハイエンドオーディオ的なある種の「お上品さ」が感じられないのです。分析的に聴くヘッドホンリスニングでは分解能やS/Nの高さは際立ちます。駆動力・瞬発力・情報量・分離・空間の広さといった諸性能は非常に優秀ですが、トータルの出音で私の好みかと言われると正直疑問があります。今回の試聴ではデジタルフィルターを切り替えていないので、もしかしたら別の設定ではもう少し柔らかく音を寄せられるのかもしれません。今日聴いた設定では、特に声の質感に荒れた印象が残るのが気になります。特にサラオレインを聴いてそれを強く感じました。LiaFarewell songでは若干硬さは残るものの、vocalに当てたリバーブ成分が適度に「分離しながらも重なる」感じが爽快です。アニソンというある種の箱庭の中での調和は取れています。

 

それにしても価格がおよそfinal D8000の10倍というのは、現実的ではありません・・・

こんな超ハイエンド機が常設展示されていて、割と気軽に試聴できることは有難いです。というか、行ってもあんまりこれ試聴している人がいません。恐れ多くて試聴すらできない気持ちもまぁ分かりますけど。経験値を貯める一環として、普段このレベルで家で聴いておられない方も、一度はインプットしておいた方が良いと思います。それで、冷静になって「何だ、こんなものか」って思って現状に満足するきっかけのひとつになることもあるわけですし。もしくは逆に「いつか必ず手に入れる」なんて一念発起して、人生が変わり始めるターニングポイントになるなんてことも?

 

P.S. 2022.6/6
Bartok DACのデジタルフィルターについて補足します。

みかささんからは、マニュアルからデジタルフィルターに関する部分を見せて頂きました。私の方で簡単に説明してしまうと

F2:クラシック向き

F3・F4:ロックやポップス

F1:シャープロールフィルタ(過渡応答は一番良くない)

ということはF2がスローロールで、順に急峻なカットオフになる感じでしょうか。

また、デジタルフィルタの設定よりもアップサンプリング(DXD、DSDDSD×2から選択)の方が音の変化は大きいそうです。

機会があればもう一度試聴して、色々設定を試せればと思います。