Astell&Kern SP3000 試聴記

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DAPに60万は、いくら何でも高すぎるとは思いますが・・・

AK4191×2 + AK4499EX×4の構成に、UIも一新して相当気合の入れた新作であることが伺えます。平時の為替レートでは45万円くらいであることを考えると、SP2000T Copper Nickelとあまり変わらないとも言えるわけで。リリースのタイミングが不運だったとは思います。

サウンドの傾向は寒色系でありながら美音風という、あまり今まで聴いたことのないタイプです。北欧系の、ひんやりした中にも自然な風合いを感じる方向性とは違います。表面が非常に綺麗に磨かれて滑らかで、引っ掛かりのない音ですがどこか人工的な質感だなと。

エッジを微妙に丸めていて解像感を強調しない音はSPシリーズの方向性なのかなと思いました。ただしSP2000時代は全般的な基礎性能がもう少し欲しいところを、音楽的な味付けで目立たなく誤魔化している印象もありました。

SP3000では中央の塊感や音圧の強い部分が和らぎ、ごちゃっとした音場が解れて各音の定位が明瞭になりました。SE180SEM1のように音のエッジを立てて解像感を強調していないのに、これよりもSP3000は細かい部分まで把握しやすくなっています。60万という価格なので厳しめなことを書くと、基礎性能の項目としては唯一「駆動力」だけ若干物足りないです。でもこれは「バッテリー駆動」であるポータブル機器の限界が見えてしまったとも言えます。これだけの価格なのだから、電源に接続する据置機器レベルの視点からどうしても評価したくなるのですが、それはやはり酷であると言えるでしょう。

 

手持ちのDAPであるSHANLING M8は、旭化成の工場火災が発生する前に生産されていたAK4499EQで、SP3000のAK4499EXとの違いについては興味のある方も多いと思われます。

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ここで肝となるのは「デジアナ分離」の2チップ体制なのだと思っています。CHORDのような超ロングタップのデジタルフィルタには及ばずとも、SP3000にもどこかそれに近い質感を覚えたのは、デジタル側での自由度が増した上で、その処理に起因するノイズがアナログ段に混入しにくくなったのが一因ではないかと考えています。これは次回記事でも触れますが、過去の一般的なDACチップが4fsとか8fsだったのに対して、AK4191では128fsでの処理が可能になっています。