ヘッドホン祭2022秋

約4年振りのリアルイベント参加

2019年冬より新型コロナの流行で、ヘッドホン祭のようなイベントが開催されない状況が長く続きました。(オンライン配信はありましたが)私はコロナが広まる前の2019年春・秋両方とも参加していなかったので、かれこれ4年振りのリアルイベントとなりました。事前登録1500名とのことでしたが、意外と前日まで枠は50人ほど残っていたりして(その後埋まりましたが)、元々事前に興味のある人というのは現実的にこれくらいの数なのでしょう。

当日は九州に大型の台風が接近していて、都内でも大雨が降ったり時折弱まる天候だったので、手持ち機材(D8000・A8000・DAP)がバッグに入れていてもやはり心配なことから、早めの撤退となりました。また入場後に試聴に整理券が必要なブースを数カ所回ってみると、どれも夕方からの券しか残っていなかったので、後日フジヤエービックで試聴できることを願って今日は諦めました。

www.phileweb.com

www.phileweb.com

では試聴してきたブースを簡単に備忘録。

Final D8000Pro Limited

LUMIXのカメラは手荷物多くて断念したので今日はP20Proです。この写真は失敗した・・・

おそらくAFDSの調整はProと同じと思います。カラーリングはともかくとして、イヤパッドに和紙繊維が使われていて、Pro標準のイヤパッドより肌触りが良くサクサクとした質感です。このパッドによって音にも微妙に違いが出ているように思いますが、会場が賑やかすぎて細かい印象まで記憶しておくのは少々難しかったです。

SHANLING M8はTurboゲインでvol70くらいでした。4.4mmバランスケーブルが納品されるまでは頻繁にジャック交換したくないので3.5mmシングルです。これでもD8000らしさはちゃんと出ています。なかなかM8が優秀なので、今後試聴環境が潤沢に整っていない場でもとりあえずこれを持参していれば何とかなるでしょう。

CHORD & Pathos

M Scaler→DAVE→InPOL Ear With DAC→FOCAL STELLIA

DAPのUSB-C to A変換を通して手持ち音源で聴けました。

CHORDのDACトランジスタアンプで透明感を活かすも良し、真空管で雰囲気を出すのもまた一興。私もE3 dCの前に真空管Enigma Athena A1で同じことをやっていました。(アレはトランジスタとのハイブリッドですが)

FOCAL STELLIAはUTOPIAより音楽的な表現に厳しさがなく、艶のある個性がこのシステムにマッチしていると感じます。

マス工房

かつてのmodel 406は現在465となり、試聴会で用意されるプレイヤーはDENONからARCAMに変更されていました。当時のDENONから通して聴く音は高域にキツさがあり、おそらくHPA側の特性ではないだろうと見込んで、それらの要素を差し引いて考える必要がありました。今回のARCAMでは癖のない穏当な音で、HPAの素の状態がより見えやすくなっています。

他社ハイエンドアンプより空間の広さを誇張せず、その範囲内で緻密な表現と凝縮されたパワーを感じます。ふわっと広がる演出系でもなく、dCS Bartokのように輪郭を立ててくるタイプでもない。本来の意味での原音忠実性はこういう音なのでしょう。

OJI Special

私が4年前に聴いた「44B」を薄型にして、ゲイン切り替えのトグルスイッチを背面に備えた「44B2」に。

この写真では両サイドの機器群が映っていないので、全体の構成が近いと思われる記事を参照

dime.jp

HPA側に十分なパワーがあり、DACも通常の機器より高電圧で、D8000をHighゲインにするとvol9時くらいで事足りてしまいました。張り出しが強く音像が硬い割に、その中身の濃さがもう少し詰まっていて欲しいという印象でした。これをLowゲインにすると10時くらいの位置で、「極端にゲイン差を付けているわけではない」という説明でした。適度に硬さが解れて、その中身が濃く情報量が豊かになっています。つまりゲイン切り替えは音量を稼ぐ目的よりも「アンプの一番美味しいところで動作させる」為に設けられたということです。これによって非常に高レベルな領域で様々なヘッドホンを理想的に駆動することが出来るようになりました。

Brise Audio

① YATONO Ultimate

A8000をリケーブルしてみました。耳掛けの部分が硬めで、反発で耳から脱落しそうになります。あらかじめ癖を付けておくと収まりが良いとのことですが、やはりポータブルオーディオのイヤホンでは取り回しの柔軟性も重要と感じました。

YATONOの音は確かに素晴らしいのだけど、A8000は付属のシルバーコートで既に完成されており、手を加えなくても良いかなと感じます。

② 据置名物タワー

Aurenderのネットワークトラポ、sforzatoのプレイヤー・電源・クロック、アイソテックの電源コンディショナー、そして評価用HPAの超豪華な6段タワー構成となっています。ちなみに社内でガチ聴きする際は3段ラックを横に2セット並べるそうです。

各社ハイエンドヘッドホンを準備されていて、まずはD8000にミドルクラスのMIKUMARI Ref.2を装着した状態で試聴します。その後、最上位のYATONO-HP Ultimateに変更して同じ曲で比較するというプログラムです。

もちろん背面もBrise Audioのケーブルで統一されています。非常に複雑な構成なのでケーブルの本数も多いです。なのに終端のヘッドホンケーブル1本を替えただけで、音がガラッと変わります。普通はシステムが複雑になると、1カ所の変更が及ぼすレベルは相対的に下がるものなんですが・・・

MIKUMARI 2では若干軽くサラッとして抜けの良い印象ですが、YATONOは一気に重厚感と深みが加わりハイエンドらしい音になります。D8000のサウンドイメージと合っているのも明らかにYATONOの方でしょう。

当方のRE・LEAF E3 dCは、Currentモードではヘッドホンケーブルが音質に影響しない方式である為に、現環境ではfinalの純正シルバーコートのまま続けますが、もし今後HPAを変更することとなった場合には、YATONO-HP Ultimateはリケーブルの本命となるでしょう。

4年の時を経て、再びハイエンドシステムに触れて

ポータブルオーディオもとりあえずの形で構築はしましたが、あくまで私が追求するのは今後も据置ヘッドホンシステムとなります。リアルイベントから遠ざかっている間に、私のシステムもそれなりに自分が納得出来る音が出るようになりました。

それでも、再びBrise AudioやOJI Specialの音を聴くと、まだまだ私が家で聴いている音はこのレベルには到達できていないことを再認識しました。決定的なのは全帯域に満ちるエネルギーと密度です。

これは現システムを維持しながらの小手先の調整では不可能な領域でしょう。E3 dCやQUTEST等の小型機器を、電源を別筐体にして強化するという手法は色々楽しめはしますが、限界点が見えることも確かです。上位のDAVEも結局電源の物量投入が弱いので、高域は非常に高精細ですが腰高な印象がありました。

とは言え現在の環境でも日常的に聴いている分には特に不満はないので、長く付き合ってじっくり検討し、来るべき時に備えることにしましょう・・・